日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-57
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毒性試験法、代替法、循環器
化学物質を曝露した実験動物に由来する組織病理学用の切片担体上で培養した幹細胞の挙動を解析することで体内毒性を外挿する新しいアプローチ
*竹澤 俊明
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抄録
動物組織の複雑な微細構造と成分を保持している組織病理学用の切片を、動物細胞の培養担体に利用する培養技術を世界に先駆けて開発して【FASEB J. 16, 1847-1849, 2002】、異なる細胞を網羅的に解析するセロミクスの研究構想を提案してきた【Biomaterials 24, 2267-2275, 2003】。その後、切片担体は部域特異的なシグナルを細胞に伝達し、細胞はシグナルを認識するセンサーとして働くことが分かってきた。具体的には、マウスに四塩化炭素を投与して軽度の肝障害を惹起した後の様々な再生過程にある肝組織より作製した切片担体上でマウスES細胞を培養することで、障害肝組織の切片にはES細胞の接着、伸展および成長を阻害する活性があること、また、特定時期の再生肝組織の切片にのみES細胞を肝実質細胞の系譜へ分化誘導する活性があることを見出した【Tissue Eng. Part A 14, 267–274, 2008】。この結果は、様々な組織に由来する切片担体上で1つの細胞株の挙動を網羅的に解析するヒストミクスの研究が展開できることを示唆する。一方、化学物質が曝露された後の器官特異的な毒性の程度は、その器官を構成している成熟分化細胞の障害度のみならず、その器官に存在する幹細胞による再生活性によっても決定されると考えられる。そこで、この視点から上述の研究成果を解釈し直したところ、四塩化炭素による肝臓の障害度および再生活性はそれぞれ切片担体上で培養したES細胞の初期接着性および分化効率より予測できることが分かってきた。このような背景から、化学物質を曝露した実験動物の各種器官に由来する切片担体上で各種ヒト幹細胞を培養して、その経時的な挙動解析からヒトに於ける毒性を外挿する新しいアプローチを提案した【Methodological Advances in the Culture, Manipulation and Utilization of Embryonic Stem Cells for Basic and Practical Applications, Craig Atwood. (ed.), InTech, Croatia, pp. 473-488, 2011】。
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© 2012 日本毒性学会
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