日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-103
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バナジウム反復経口投与による臓器毒性の病理組織学的検索(その2)
*長谷川 達也外川 雅子河村 基史井村 仁美森田 剛仁島田 章則瀬子 義幸
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抄録
【目的】メタバナジン酸アンモニウム(AMV)をマウスに反復経口投与した場合、その毒性が通常食を与えた動物に比べ、高脂肪食を与えた動物の方が強く発現することを我々は報告した。これらの毒性発現に臓器への脂肪蓄積が関与することも示した。今回、AMVの組織傷害を生化学的、病理組織学的に検討したので報告する。
【方法】C57BL/6Nマウス(7週齢、雄)に通常食(CE-2)を与え飼育した。AMVを1日1回、0, 10, 20, mg V/kg/dayの割合で4日間強制経口投与した。AMV投与24時間後にエーテル麻酔下で動物を解剖し血液と臓器を摘出した。血漿を用いて生化学的検査を行った。臓器の一部をパラフィン包埋後、HE染色して病理組織学的検索を行った。一部の臓器についてはSudan black B染色(脂肪染色)ならびにAcroleinに対する抗体を用いて免疫染色して同様に病理組織学的検索を行った。さらに肝臓は電子顕微鏡検索も行った。
【結果】AMV 20 mgV/kg投与群では、全例に下痢が認められ、投与群の半数が死亡した。生化学的検査の結果ではAST, ALT, CPK, CKMB, CREが顕著に上昇した。肉眼所見として、肝臓の白色調変化(脂肪肝)および小腸の著しい膨化が認められた。HE染色の結果、肝細胞、尿細管上皮細胞、消化管粘膜上皮細胞(小腸および大腸)の脂肪質内に彌慢性の微小空胞化が認められた。これらの微小空胞化は脂質染色でいずれも陽性像を示した。電子顕微鏡学的検索の結果、コントロールと比較して20 mgV/kg投与群の肝細胞質内に見られた脂肪滴の電子密度の低下、数およびサイズの増大が認められた。また、小腸粘膜上皮細胞では著明な変性、壊死、脱落が認められた。これらの変性、壊死、脱落した細胞に一致し、脂質過酸化傷害マーカーである抗Acrolein抗体陽性像が見られた。従って、小腸における細胞死の要因として酸化ストレスの関与が示唆された。AMVは直接あるいは間接的に酸化ストレスを誘導して細胞内小器官の膜を傷害し、細胞内の脂質蓄積を伴う脂質代謝障害ならびに小腸粘膜上皮細胞の変性、脱落、および下痢を生じさせる可能性が示唆された。
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© 2012 日本毒性学会
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