日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-151
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たばこ副流煙によるヒストン修飾変化
*伊吹 裕子豊岡 達士
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抄録
[目的] ヒストンの化学修飾による核内クロマチンの構造変化は、特定の遺伝子群の誘導もしくは抑制を引き起こし、発がんプロモーションに関わっていると考えられている。本研究ではタバコ副流煙中化学物質によるヒストン修飾について検討を行い、新しい見地からタバコ副流煙による発がんについて検討することを目的とした。
[方法] タバコ副流煙を細胞培養液中にトラップし、ヒト肺上皮細胞A549に作用させ、その後のヒストン修飾について各種抗体を用いて検出した。
[結果] タバコ副流煙により明らかな修飾変化を示したものは、ヒストンH2AX(S139)のリン酸化、ヒストンH3(S10)、H3(S28)のリン酸化であった。ヒストンH3(S10)のリン酸化に伴うとされるH3(K14)のアセチル化はわずかであった。ヒストンH2AXのリン酸化は、タバコ副流煙作用により産生される活性酸素種によるところが大きく、一方、ヒストンH3のリン酸化はAktのリン酸化といったシグナル伝達経路を経ており、核内分布が一致しないこと等からそれらは全く別の系で動いていることが判明した。proto-oncogene c-fosのプロモーター領域におけるヒストンH3(S10)リン酸化の亢進が免疫沈降法により示唆された。
[結論] タバコ副流煙により、ヒストンH2AXのリン酸化、ヒストンH3のリン酸化が誘導されることを明らかにした。ヒストンH2AXのリン酸化はDNA損傷マーカーであり、発がんイニシエーション、また、H3のリン酸化はproto-oncogeneの発現に関連することから発がんプロモーション活性を反映するものであり、これらのヒストン修飾変化はタバコ副流煙による発がんに繋がるものと考えられた。
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© 2012 日本毒性学会
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