抄録
キノロン系合成抗菌薬ofloxacin(OFLX)の900 mg/kgを3週齢の雄性Slc: SDラット(幼若ラット)に通常飼育条件下で単回経口投与し、投与8時間後に採取した大腿骨遠位関節軟骨について組織学的検査を実施した。また、関節毒性発現への影響が示唆されているtumor necrosis factor receptor superfamily, member 12a(Tnfrsf12a)、prostaglandin-endoperoxide synthase 2(Ptgs2)、plasminogen activator, urokinase receptor(Plaur)、及びmatrix metalloproteinase 3(Mmp3)遺伝子(Goto et al., Toxicology. 2010;276:122-127)についてreal-time PCR法で遺伝子発現量を調べた。さらに、関節毒性発症における軟骨に対する荷重負荷の影響を調べるため、OFLXの900 mg/kgを同様に投与し、投与後直ちに尾懸垂処置を施した幼若ラットの大腿骨遠位関節軟骨について、組織学的検査及び遺伝子発現量の測定を行った。その結果、通常飼育条件下では、組織学的検査でOFLX投与により軟骨細胞の核濃縮及び軟骨基質の亀裂形成が誘発された。また、遺伝子発現量測定では、Plaur及びMmp3遺伝子発現量の増加並びにTnfrsrf12a及びPtgs2遺伝子発現の増加傾向が認められた。一方、尾懸垂条件下では、通常飼育条件下で認められた大腿骨遠位関節軟骨の組織学的変化及び遺伝子発現量の増加は認められなかった。以上のことから、OFLXにより誘発される幼若ラットの軟骨病変形成及び遺伝子発現の変化には、関節軟骨に対する荷重負荷が必須であることが判明した。