日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-163
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鳥類異物代謝における重要なCYP分子種の特定とその種差の解明
*渡邉 研右河田 みなみ川合 佑典池中 良徳石塚 真由美
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抄録
【背景と目的】鳥類では、ミクロソームを用いたシトクロムP450(CYP)によるワルファリン代謝活性について、ニワトリと比べ他種鳥類では活性が低く、数十倍の種差があることが明らかになっている。しかし、これまでにゲノムプロジェクトが終了しているニワトリにおいてもCYP分子種ごとの発現解析や機能解析が行われておらず、異物代謝上重要と考えられる分子種やそれぞれの機能が明らかになっていない。そのため、これまでに報告されている鳥類種間での異物代謝能の種差が、どの分子種に帰属されるのかも明らかでない。そこで、本研究では、鳥類の異物代謝において重要と考えられる分子種の特定と、その種差を明らかにすることを目的とした。
【方法と結果】ニワトリの肝臓を用い、CYP分子種ごとのmRNAコピー数を比較したところ、肝臓においてCYP1A5、2C23、2C45が多く発現していることが明らかになった。一方で、ニワトリなどの家禽で研究が進められているCYP3A37は大きな発現量を示さなかった。また、哺乳類でCYP2Bや3Aを誘導するフェノバルビタールを投与した場合においても、CYP2C、3Aが受ける誘導は同程度だった。そこで、これまでに機能解析がほとんど行われていないCYP2C23について8種の鳥類からcDNAクローニングを行い、鳥類種間で保存されているアミノ酸領域に対する抗ペプチド抗体の作製を行った。各鳥類種の肝臓ミクロソームについて、この抗体を用いたウェスタンブロット法を行った結果、すべての鳥類種でCYP2C23特異的に交差反応が見られ、CYP2C23タンパク質を定量することができた。
【考察】mRNAコピー数比較から、鳥類ではCYP2Cサブファミリーが多く発現し、重要な分子種であると考えられた。そこで、鳥類CYP2C23特異的抗体を用いたタンパク質発現量比較を行ったが、その発現量には大きな種差が見られなかった。以上の結果より、鳥類種間で見られる活性の種差はタンパク質発現量の違いによるものではなく、酵素の機能的な違いによるものであると考えられた。
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© 2012 日本毒性学会
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