抄録
【目的】医薬品による有害事象のうち、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)及び中毒性表皮壊死症(TEN)を含む重症薬疹は、症状が重篤で、予後が悪いことから、発症予測のためのバイオマーカーの確立が望まれる。近年、高尿酸血症治療薬アロプリノールによる重症薬疹の発症にHLA-B*58:01が相関することが、白人及びアジア人で報告された。さらに、我々は、日本人において第6番染色体のHLA遺伝子の近傍(6p21.3)に存在する遺伝子の多型がHLA-B*58:01と絶対連鎖不平衡にあり、SJS/TEN発症のサロゲートマーカーとなりうることを見出した。そこで、今回、この遺伝子多型の簡便なタイピング系の構築を試みた。
【方法】日本人においてHLA-B*58:01と絶対連鎖不平衡(ρ2 = 1, D’ = 1)を示す乾癬感受性遺伝子(PSORS1C1)上に位置するrs9263726 (110G>A, Arg37His)につき、迅速タイピング系をPCR-RFLP法により構築した。SNP を挟むDNA断片をPCRで増幅した後、FokIによる制限酵素消化を行い、DNA電気泳動パターンから遺伝子多型の有無を検出した。
【結果および考察】中国系アメリカ人健常者について、構築したPCR-RFLP法によるrs9263726のタイピング結果は、TaqMan SNP assay法による結果と完全に一致した。さらに、HLAタイプが既知の日本人SJS/TEN発症者のうち、HLA-B*58:01ヘテロ保因者はrs9263726がヘテロ接合体であることを確認した。HLA-B*58:01と絶対連鎖不平衡にある遺伝子多型を利用した簡便で安価なタイピング系によるHLA-B*58:01保因者のスクリーニングは、日本人におけるアロプリノールによるSJS/TEN発症の回避に有用と考える。