抄録
目的 医療機器等のポリマー材料の感作性リスクを評価するにあたり、ポリマーからの抽出液(抽出物)を用いて評価を行っている。このポリマーからの抽出液(物)作製による試験方法では、大きく分けて2つの方法があり、ISO10993-10,12に従い生理食塩液とゴマ油による抽出液を用いた方法、もう一つに国内のガイドラインに従う有機溶媒による抽出物(液)を用いた方法である(現在のISOでは、本方法も記載されている)。そこで、陽性対象物質(DNCB)を0.1%含有させて重合したPMMA(陽性対照プレート:PCプレート)及び、実使用において10年以上の長期使用実績があり、感作性の報告が無い既承認材料Aの2つの試験試料を、ISO(生理食塩液とゴマ油抽出)及び国内ガイドラインに記載されている有機溶媒(アセトン)による抽出、による2つの方法で試験を行い、それぞれの方法による検出感度の違いを確認した。
方法 Hartley系モルモットを使用し、FCAを併用したモルモットMaximization test法により実施した。
結果、考察 ISOに従った生理食塩液・ゴマ油による抽出では、PCプレートにおいても、感作性を全く検出出来なかった。一方、国内ガイドラインによる有機溶媒による抽出では、PCプレートにおいて、明確な感作性が認められたが、材料Aにおいても、僅かに感作性を認める結果となった。これらの結果から、PCプレートの感作性はISOに従った抽出では検出出来ないが、国内ガイドラインによる方法では検出可能であった。この結果を見る限りアセトンでの抽出で十分な感度が得られた。しかし、既承認材料Aでの結果を考えると、感度が非常に高く、陰性のものまで偽陽性と判定される可能性が示唆された。実使用で発生する感作性について、アセトンによる抽出で実施した結果と必ずしも相関があるとは考えにくく、より適切な抽出条件、抽出溶媒を使用する事で過剰に検出される結果を現実的なものに置き換える事も考慮する必要があると思われる。この場合、PCプレートでの抽出を同条件で実施し、抽出操作も含めた試験系の妥当性を保証する必要があると考える。