日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-192
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消化管および肝臓におけるCYP3Aのラット系統差
*福原 裕司鈴木 勝也小松 加代子岩田 恵実原 裕一大須賀 勇加藤 幾雄小林 稔秀金子 公幸
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抄録
[緒言]食品中に含まれる成分には、薬物代謝などの反応に広く関与するCytochromeP450(CYP)の発現に影響をおよぼし、薬剤との食-薬相互作用を起こすものが存在する。相互作用のリスクをラットを用いて評価することは有益であるが、ラットの肝臓におけるCYPの発現・誘導には系統差があることが知られている。しかしながら、消化管CYPの発現・誘導に関するラット系統差については十分な報告がない。そこで我々は、各系統のラットにCYP誘導剤(Dexamethasone:DEX)を投与し、小腸で誘導されるCYP3Aが肝臓と同様に系統差を示すかどうか検討した。[方法]9週齡の雄性Crl:CD(SD)系(以下SD)、Crl:WI(Han)系(以下Han)およびCrlj:WI系(以下WI)ラットに、蒸留水(10 mL/kg)またはDEX(60 mg/10 mL/kg)を4日間連続経口投与した。投与終了日の翌日、小腸および肝臓を摘出し、P450総量の測定およびWestern blottingによるCYP3A発現量の定量と、免疫組織化学染色(抗CYP3A染色)による組織学的評価を行った。[結果]肝臓においてはDEX投与後のP450総量およびCYP3A発現量に系統差がみられ、Hanで最も高度な誘導が認められた。一方、小腸においては免疫染色の結果からCYP3Aの誘導開始部位が系統により異なる傾向が認められたが、定量的にはCYP3Aの発現量に明らかな系統差はみられなかった [結論] 肝臓で確認されたCYP3Aの発現・誘導の系統差はCYP3Aが関与する食-薬相互作用の肝臓における評価に影響を及ぼす可能性があると考えられた。一方、小腸では定量的にはCYP3Aの発現・誘導に系統差が認められなかったため、CYP3Aが関与する食-薬相互作用を消化管で評価する上で、系統の違いは毒性学的に問題とならないと考えられた。
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© 2012 日本毒性学会
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