日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-234
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ブレオマイシン誘発肺障害の発症機序とバイオマーカーの探索-脂質成分とプロスタグランジンの変動
*坂東 清子紺屋 豊梅村 康士和泉 自泰国松 武史木村 重紀船橋 斉馬場 健史福崎 英一郎
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抄録
【目的】薬剤誘発性肺障害の発症機序には不明な点が多く、モニターできる良好なバイオマーカーがないことが医薬品開発の重要な課題となっている。これまでの研究で肺のサーファクタント脂質の変動と肺病変との関連性が報告されていることから、本研究では薬剤誘発性肺障害の発症機序の解明及びバイオマーカー探索を目的に、ブレオマイシンの肺障害に伴う肺サーファクタント脂質の経時変動を、ターゲットメタボロミクスの手法を用いて網羅的に検索した。さらに、プロスタグランジン(PG)類も網羅的に一斉定量し、サーファクタント脂質変動と肺の炎症の発生機序ついて考察した。
【方法】雄性SDラットにブレオマイシン塩酸塩(1、5 mg/kg)を単回気管内投与後、投与後6時間から21日間まで経時的に気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取した。BALFサンプルから脂質成分を抽出し、LC/MS/MSで脂質の網羅分析を行った。また、PG類はBALFサンプルを固相抽出し、キャピラリーLC/イオントラップ型質量分析計で一斉定量した。なお、同時点で肺を採取し、病理組織学的検査を実施し、炎症及び線維化の程度を確認した。
【結果および考察】BALF脂質の網羅分析の結果、ホスファチジルコリン類およびホスファチジルエタノールアミン類が肺の炎症性の進展とともに増加し、炎症の収束とともに減少することが明らかとなった。一方、ω-6脂肪酸の増加が投与直後から認められ、同時期にPGE2やPGD2の増加が認められたことから、肺のサーファクタント由来の脂肪酸がアラキドン酸カスケードを介して、炎症性メディエーターとなり、炎症を惹起している可能性が示唆された。また、ω-6脂肪酸も含む不飽和脂肪酸類は炎症ピーク時には減少が認められ、線維化の進行ともに再び増加する傾向が認められたことから、線維化のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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© 2012 日本毒性学会
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