日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-246
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人工染色体ベクターを用いた高感度毒性評価細胞の作製
*西田 直史吉村 裕貴佐々木 勝崇中島 芳浩近江谷 克裕押村 光雄大林 徹也
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抄録
[目的]
化学物質のリスク評価においては、一般的に動物を用いた長期毒性試験によって評価の基礎となる有毒性情報を取得している。しかし、動物愛護の観点や長期毒性試験の費用・効率が課題として指摘されていることから、動物実験に代わる評価手法が必要である。そこで本研究では、発光イメージング技術と染色体工学技術を融合させたin vitro試験系の開発を目指す。
[方法]
ヒトインターロイキン(hIL)-1βの転写制御領域を含むBACクローンを改変し、翻訳開始点下流に緑色ルシフェラーゼ遺伝子(SLG)を導入した。この改変BACクローンを長大ゲノムDNAの搭載が可能なヒト人工染色体(HAC)ベクターに組換えた。CHO細胞内に保持されているHACベクターを免疫毒性に感受性の培養細胞(U937細胞)に移入し、毒性評価細胞hIL-1β HAC U937細胞を樹立した。本研究では、この細胞のリポポリサッカライド(LPS)に対する動態を解析し、毒性評価細胞としての適正を検証した。
[結果と考察]
樹立したhIL-1β HAC U937細胞をLPS(100 ng/mL)で刺激したところ、LPS添加1.5時間後から経時的なルシフェラーゼ活性の増加が確認された。そのときの内因性hIL-1βをELISAで測定したところ同様の増加を示した。1-100 ng/mLのLPSで細胞を刺激し、ルシフェラーゼアッセイとELISA法の感度および反応時間を比較したところ、ルシフェラーゼアッセイにおいては1 ng/mLのLPS添加6時間後で有意な増加を検出できた。さらにLPSの検出限界を検討するために、0.001-0.1 ng/mLの濃度で細胞を刺激したところ、0.01 ng/mLでルシフェラーゼ活性の有意な増加が確認された。
これらの結果から、BACクローンの長大転写制御領域とルシフェラーゼ遺伝子、人工染色体ベクターを用いて、高感度な毒性評価細胞を作製できることが示された。
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© 2012 日本毒性学会
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