日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-68
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ヒトES細胞を用いた神経系誘導培養系におけるTCDDの影響
*大迫 誠一郎山根 順子今西 哲遠山 千春
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抄録
ヒト胚の各発生段階における一時的な化学物質の曝露がその後の個体や細胞の性状に及ぼす影響を検出する試験系が求められている。2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)の個体発生過程における曝露は催奇形性等の様々な生体影響を引き起こす。本研究ではヒト胚性幹細胞(ES細胞)を用いた神経系細胞発生過程においてTCDDの影響を調べた。マウス胎仔繊維芽細胞(MEF)をフィーダーとしてヒトES細胞(KhES1)を増殖させ、MEF除去後に胚様体(EB)を形成させた。ES細胞のプレート播種直後(Day0)から24時間、TCDD(0.1nM-10nM)に曝露した。また、Day8で神経誘導培地に変更しDay9でTCDDに曝露した群も設けた。Day10でオルニチンラミニンコートプレートに播種、Day12から神経増殖培地に変え、Day28で再播種、Day40まで培養して神経系細胞集団を分化させた。CYP1A1の誘導はDay9曝露のみで認められ、Day0曝露とDay35曝露群での反応性は認められなかった。Day9曝露群をDay25まで神経誘導培養した結果、ニューラルロゼッタの形成率が対照群や他の処理群より上昇しており、NESTIN, MTAP2のレベルが高く、SOX17, FOXA2の低下が著しいことがわかった。Day0曝露群ではTCDDによる影響は認められなかった。これらの結果は、EB形成後期の神経系誘導条件ではTCDDに対する反応性が他のステージより高く、またその結果として内胚葉系の細胞の分化を阻害し、外胚葉系の細胞の分化率を上昇させることを示唆している。(本研究は厚生労働科学研究費(化学物質リスク事業)により行われた。)
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© 2012 日本毒性学会
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