日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-1
会議情報

重金属の毒性とその防御の分子メカニズム
カドミウムとマンガンの毒性標的器官における金属輸送体の役割
*藤代 瞳姫野 誠一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

カドミウム(Cd)は腎障害とそれに起因するイタイイタイ病、マンガン(Mn)はパーキンソン病様の神経症状の原因である。しかし、CdやMnの輸送機構はまだ十分に分かっていない。われわれは、これまでにCdあるいはMn耐性細胞を作成し、その性状を解析することにより、CdおよびMn輸送に亜鉛輸送体であるZIP8, ZIP14, および鉄輸送体の DMT1が関与することを明らかにしてきた。本研究では、①Cd毒性の標的組織である腎臓におけるCd輸送、②Mn毒性の標的組織である脳神経細胞におけるMn輸送について解析し、それぞれの標的臓器におけるZIP8, ZIP14, DMT1の役割について検討した。
 腎臓近位尿細管由来細胞を用いてsiRNAによりZIP8、およびZIP14の発現を抑制すると、管腔側からのCd、Mn取り込み効率が約50%に低下した。また、in situ hybridizationにより腎臓近位尿細管のS1, S2領域よりもS3領域でZIP8, ZIP14の発現が高いことを見出した。したがって近位尿細管のS3領域の管腔側からのCd, Mn取り込みにZIP8, ZIP14が関与していることが示唆された。
 一部の原発性パーキンソン病患者において、金属が脳内へ異常蓄積することが報告されている。また、パーキンソン病におけるIL-6などの炎症性サイトカインの役割が示唆されている。そこで、神経細胞における金属輸送機構およびIL-6による影響を解析した。脳神経系の細胞では、DMT1のみならず、ZIP14がMn輸送に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、IL-6がZIP14の発現上昇を介してMnの神経細胞への取り込みを促進する可能性を明らかにした。

著者関連情報
© 2012 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top