日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S12-3
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In vitro 毒性試験法の探索毒性試験への展開
ヒトiPS細胞由来心筋とニューロンを用いた非臨床試験法の開発
*関野 祐子
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抄録
非臨床試験に利用される動物モデルは、被験薬に対する反応性のヒトと動物の種差の影響が極力少なくなるように慎重に選択されてはいるものの、ヒトに対する被験薬の有効性・安全性評価には限界がある。臨床試験や市場においてヒトへの有害作用が初めて判明し、開発または販売が中止になるとその経済的損失は大きい。さらに近年、ヒト特異的タンパク質を標的とするバイオテクノロジー応用医薬品が登場し、化学薬品を対象としてきた従来の試験法の有害反応予測性の限界はさらに深刻な問題となる。そこで、これまでにも増して被験薬のヒト特異的な有害反応を予測する試験法の開発が望まれてきており、従来の非臨床試験に加えて、ヒト型タンパクを発現する遺伝子改変動物の利用、ヒト細胞を用いたin vitro試験法などによる追加情報が求められるようになってきた。
 ヒト由来人工多能性幹(iPS)細胞作製技術の開発には、医薬品の承認申請に必要とされる種々の試験系にヒト細胞を利用することを可能にすることが期待される。しかしヒトiPS細胞の実用化に関しては、再生医療への応用に重きが置かれており、医薬品開発への利用研究は遅れている。我々は現在、ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋やニューロンを用いたin vitro非臨床試験への応用可能性を検証している。ヒトiPS細胞由来の心筋やニューロンを非臨床試験法に利用するには、標本や実験プロトコールの標準化に関する研究をレギュラトリーサイエンスとして戦略的に推進して、関連情報の共有化を行うことが重要である。そして、多施設間で実験データの再現性を確認できる環境をいち早く整備すること即ち、多くの試験施設で同じ細胞特性を示す分化細胞を利用できる環境整備が必須である。今後、分化細胞の配給システムの構築、多施設間バリデーションを実現できる試験プロトコール整備を急ぐ必要がある。
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© 2012 日本毒性学会
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