日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S3-4
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生態毒性試験生物の基礎研究
生態毒性試験と薬理ゲノミクスにおけるゼブラフィッシュの役割
*田中 利男西村 有平島田 康人
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抄録

化審法の生態毒性試験において従来より魚類は頻用されてきたモデル生物であります。一方最近10年間で、動物愛護管理法などの関連から医学研究におけるゼブラフィッシュの活用が国際的に激増しており、その医学生物学的情報は著しい増加が認められます。さらに、ハーバードで2007年にゼブラフィッシュによりスクリーニングした医薬品が、昨年末には臨床開発に成功しており、世界中でゼブラフィッシュ創薬ベンチャーが多数創成されています。また、生態毒性試験や創薬スクリーニングにおいて、ゼブラフィッシュに加え、ミジンコ、ミミズ、鳥類、ほ乳類などが多用されており、これらの多彩な種における生態毒性メカニズムの総合的理解の基盤となるのがゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームなどのオミックス解析となります。ヒトとゼブラフィッシュのゲノムにおける相同性は、約7割とされていますが、我々は医薬品の安全性薬理学や病態モデルにおけるトランスクリプトームの類似性を、数多く明らかにしてきました。また、毒性や薬効のメカニズム解析において、ほ乳類と比較して容易に遺伝子介入(ノックダウン、過剰発現など)が可能であるだけではなく、脊椎動物であることから各臓器別毒性評価ができることが大きな特徴となります。以前はゼブラフィッシュでは不可能とされたゲノム改変技術が、ZFNやTALENsにより可能となりました。さらに我々は、各種の色素欠損ラインとトランスジェニックを交配させた独自のゼブラフィッシュを13種類(MieKomachi001-013)創成し、新規in vivoイメージングプローブを多数開発し、生体レベルで特定の細胞ライブイメージングのハイスループット化を実現しています。このように我々は、薬理ゲノミクスにおけるモデル生物としてのゼブラフィッシュを、10年以上研究してきましたので、この視点から生態毒性試験におけるゼブラフィッシュの役割について報告します。

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© 2012 日本毒性学会
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