日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S9-3
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薬物性肝障害―最新知見を基に
末梢血中RNAを指標とした薬剤性肝障害バイオマーカー
*大久保 慎吾
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抄録
新薬の安全性評価において用いられる従来のバイオマーカーの多くは、臓器特異性が低く、より精度良く安全性を評価するために、高い臓器特異性を有した新たなマーカーの開発が望まれている。近年、末梢血中の肝臓特異的mRNAあるいはmicroRNAが、既存のマーカーに比べて肝臓特異性が高く、高感度なマーカーとして注目されている。これら肝臓特異的RNAは、1)臓器特異性が高い、2)PCRで検出可能なため測定系の構築が容易、3)塩基配列が既知であれば動物種差に関わらず測定できる、というメリットがある。我々はこれまでに、末梢血中の肝臓特異的mRNAの安全性バイオマーカーとしての可能性を検証してきた。まず、各種遺伝子発現データベースから肝臓特異的mRNAとしてalbumin (Alb)およびα1-microglobulin/bikunin precursor (Ambp)遺伝子のmRNAを選定した。続いて、これらのmRNAが、既知肝毒性物質であるD-galactosamine HCl (D-gal)あるいはacetaminophenを投与したラットの末梢血においてRT-PCR assayにより検出されることを確認した。さらに、Alb mRNAはD-gal投与2時間後において、既存の肝障害マーカーであるALTが上昇する以前に末梢血中で検出された。一方、塩酸ブピバカインによるラット骨格筋障害モデルにおいては、ASTおよびALTの高値が認められたにも関わらず、Alb及びAmbp mRNAは末梢血中で検出されなかった。以上より、肝障害時に末梢血中で検出される肝臓特異的mRNAは、従来マーカーに比べて臓器特異性の高い肝障害バイオマーカーとして利用できる可能性が示された。さらに、上記2種のmRNAに加え、apolipoprotein h、group specific component、plasminogen及びsolute carrier organic anion transporter 1b2 mRNAの4種類の肝臓特異的mRNAをこれまでに選定し、血漿中の6種のmRNAの絶対定量法を構築した。本シンポジウムでは、我々の最近の検討結果並びに末梢血中mRNAあるいはmicroRNAをマーカーとして利用する研究の最新動向を紹介する。
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© 2012 日本毒性学会
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