日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-20
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ノニルフェノールポリエトキシレートはどのようにしてDNA二本鎖切断を誘導するのか
*豊岡 達士伊吹 裕子
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抄録
  ノニルフェノールポリエトキシレート (NPEOs) は家庭及び工業用洗浄剤として広く利用されている非イオン界面活性剤である。NPEOsはその分解物が内分泌攪乱作用を有することより、その作用に関する研究がこれまでに数多くなされてきたが、NPEOsの遺伝毒性に関する研究は皆無であった。このような中、我々はNPEOsが非常に強力なDNA損傷誘導因子であることを DNA二本鎖切断 (DSBs)の生成に伴って誘導されるヒストンH2AXのリン酸化 (γ-H2AX)を指標に初めて明らかにし、第38回毒性学会にて発表した。しかしながら、そのH2AXリン酸化メカニズム、すなわち、NPEOsがどのようにしてDSBsを生成するかについては不明であった。本研究ではNPEOsによるDSBs生成メカニズムをDNAのホスホジエステル結合を切断・分解する酵素であるDeoxyribonuclease I (DNase I)に着目し検討、その一端を明らかにしたので報告する。
  DNase IはCa/Mg依存性エンドヌクレアーゼであり、通常状態では、細胞骨格を形成するアクチンタンパク質と結合、不活性状態で主に細胞質に存在する。MCF-7細胞において、キレート剤EGTA及びEDTAの存在下でNPEOsを作用したとところ、NPEOsによるγ-H2AX誘導は顕著に抑制された。一方、過酸化水素作用によるγ-H2AXの誘導は、当該キレート剤で抑制されることはなく、NPEOsによるγ-H2AX誘導にDNase Iの関与が強く示唆された。DNase IがDNAを切断するためにはDNase Iの核内移行が必要である。NPEOs作用後のDNase Iの局在を免疫染色法で検討した結果、DNase Iは作用後迅速に核内へ移行することが明らかとなり、このDNase Iが核内へ移行した細胞ではγ-H2AX foci像が観察された。また、このとき細胞骨格アクチンをphalloidinで染色したところ、NPEOs作用による顕著なアクチンフィラメントの崩壊が認められた。以上の結果より、NPEOsはアクチンフィラメントを崩壊させることで、DNase Iの放出、核内移行を促しDSBsを誘導したことが示唆された。本研究で提唱するDSBs誘導機構は、これまでに提唱されているものとは全く異なる新規機構であり、関連分野に重要な知見を与えるものと考えられる。
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© 2013 日本毒性学会
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