日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-23
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一般演題 ポスター
ホメオボックス蛋白質HOX-B13が示すメチル水銀毒性増強におけるTNF-αの役割
*仲野 亮福澤 啓睦黄 基旭永沼 章
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抄録
【目的】メチル水銀は水俣病の原因物質として知られている環境汚染物質である。しかし,メチル水銀毒性の発現に関わる分子機構は未だ明らかになっていない。これまでに我々は,発現抑制によってヒト胎児腎臓由来HEK293細胞にメチル水銀耐性を与える因子としてHOX-B13を同定し,このHOX-B13がメチル水銀によるTNF-αの誘導に必要であることを明らかにしている。そこで本研究では,HOX-B13が示すメチル水銀毒性増強作用におけるTNF-αの役割について検討した。

【結果・考察】細胞外に放出されたTNF-αと受容体との結合を阻害する試薬であるWP9QYを培地に添加したところ,HEK293細胞のメチル水銀毒性が軽減された。しかし,このWP9QYによるメチル水銀毒性軽減作用はメチル水銀耐性を示すHOX-B13発現抑制細胞では認められなかった。このことは,HOX-B13によるメチル水銀毒性増強に培地中に放出されたTNF-αが関与していることを強く示唆している。これまでに,TNF-αの細胞毒性にc-JUNのリン酸化が関与しているとの報告がある。そこで,メチル水銀がc-JUNのリン酸化に与える影響を調べたところ,メチル水銀の処理時間に依存してc-JUNのリン酸化が著しく増加した。また,このメチル水銀によるc-JUNのリン酸化はHOX-B13の発現抑制またはWP9QYの培地中への添加によって部分的に抑制された。さらに,c-JUNリン酸化に関わるJNKの阻害剤の培地への添加またはc-JUNの発現抑制はHEK293細胞のメチル水銀毒性を軽減させた。また,メチル水銀はSAPK/JNKも処理時間に依存してリン酸化することを確認した。以上のことから,HOX-B13が示すメチル水銀毒性増強作用にTNF-αの発現誘導を介したJNK活性化によるc-JUNのリン酸化が一部関与している可能性が考えられる。
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© 2013 日本毒性学会
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