日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S11-1
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シンポジウム 11 日本免疫毒性学会との合同シンポジウム「免疫毒性の最近の潮流」
ナノ粒子の安全使用に向けた検討:免疫毒性学の観点から
*吉岡 靖雄堤 康央
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抄録
近年,サブミクロンサイズの結晶質シリカやアラムアジュバント,さらには生体内微粒子である尿酸結晶やβアミロイドが,細胞内パターン認識受容体であるインフラマソームを活性化し,自然免疫応答を誘導することが報告された。これら報告を契機に,微粒子センサーとも言うべき新たな分子機構が明らかとされ,微粒子の免疫毒性が誘発する病態発症メカニズムの解明に向けた足掛かりができつつある。一方で,我が国のナノテクノロジー研究は,開発・実用化の点で世界をリードしており,サブミクロンサイズ(100 nm以上)の従来素材と比較して,圧倒的に優れた有用機能を有するナノマテリアル(少なくとも一次元の大きさが100 nm以下であり,ウイルスよりも小さい)が続々と産み出されている。例えば,医薬品・食品・化粧品領域では,非晶質ナノシリカやナノ酸化チタンなどを適用した製品が数多く使用されている。しかし,その安全性評価は未だ十分とはいえず,微粒子の免疫毒性研究の進展も相俟って,より一層の安全性評価・確保が待望されている。即ち,持続的なナノ技術(Sustainable Nanotechnology)の発展のためにも,ナノマテリアルのADME(吸収・分布・代謝・排泄)解析や免疫毒性を初めとするハザード解析,さらにリスク解析が喫緊の課題として位置付けられている。本観点から,我々は,ナノマテリアルの安全性確保やリスク解析に資するナノ安全科学研究を推進しており,ナノマテリアルの自然免疫・獲得免疫といった免疫機能への影響評価についても注力している。そこで本発表では,我々が推進するナノ安全科学研究について,特に免疫毒性学的観点からの取組みを紹介させて頂く。また,ナノマテリアルの免疫影響を有効活用した,炎症性疾患に対するナノメディシン開発に関しても,まだまだ萌芽的成果であるものの報告させて頂き,各方面からのご批判,ご意見を頂戴したい。
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© 2013 日本毒性学会
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