日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S12-3
会議情報

シンポジウム 12 「ファーマコビジランス」非臨床・臨床ジョイントディスカッションによるヒトでの副作用リスク最小化へのチャレンジ─実践編─心血管系・腎系副作用等「非臨床/トキシコロジストは,臨床最前線の医学専門家等との連携により最先端の科学技術に基づき副作用リスクをどのように読むか」
臨床第一相試験においてQT延長作用により終結した開発候補品の安全性薬理評価
*足立 秀之ギリー エドワード ステュアート築舘 一男
著者情報
キーワード: 安全性薬理, QT延長, Ikr電流
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
新薬を待ち望まれる患者様やご家族に有効かつ安全性の高い医薬品を早期に上市し安定的に供給することは,製薬企業で勤務する私たちの共通の使命である。この使命を遂行する過程で,非臨床及び臨床試験において不本意にも安全性上の課題により製品開発を断念,または承認取得後に市場から撤退を余儀なくされることが少なからずある。心脈管系副作用,とりわけ心電図QT延長作用は,現在,安全性薬理研究における重要課題の一つである。我が社において,2000年のICH-S7A施行前に臨床導入を目指し,開発していたphosphodiesterase 5阻害薬は,ラットで明確な薬理作用を示した。また,4週間のラット(300 mg/kg)及びサル(1000 mg/kg)の経口投与毒性試験において重篤な毒性所見は認められず,安全性の高い薬剤と考えられた。しかしながら,臨床第一相試験において健常人の薬理作用を確認したものの,QTc延長作用を示す所見を認めた。これを受け,我が社で初めて実施したhERG試験において候補化合物及び代謝物によるIkr電流の抑制作用,また麻酔犬においてQT延長作用が観察され,催不整脈作用の懸念により開発を断念した。2005年のICH-S7BとE14ガイドラインの施行により,hERG細胞や摘出心筋標本を用いた電気生理学試験及びテレメトリー覚醒動物試験などの非臨床試験,並びにヒトにおけるthorough QT/QTc臨床試験の実施が一般化された。これに伴い,心電図,特にQT延長リスクを有する化合物は開発ステージにおいて排除される。私たちの経験は,これらガイドラインの有用性を裏付けると共に,「効率的な新薬開発」を進めるためのトランスレーショナルリサーチの更なる発展の必要性を示す。本会で,上記化合物の心脈管系安全性情報の開示を通して,ヒトでのリスク低減化に役だつ安全性薬理情報が提供できれば幸いである。
著者関連情報
© 2013 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top