日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S12-4
会議情報

シンポジウム 12 「ファーマコビジランス」非臨床・臨床ジョイントディスカッションによるヒトでの副作用リスク最小化へのチャレンジ─実践編─心血管系・腎系副作用等「非臨床/トキシコロジストは,臨床最前線の医学専門家等との連携により最先端の科学技術に基づき副作用リスクをどのように読むか」
心腎連関疾患における尿中微量アルブミンとL型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の活用
*菅谷 健
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
バイオマーカーとは「病態生理学的な裏づけのもとに測定され,治療介入による薬理学的応答を評価しうる客観的指標」として定義される。つまりバイオマーカーの使用目的には,単なる診断指標としてのみならず臨床上の治療方針決定や新薬開発への活用(clinical actionability) が含まれている。腎疾患領域のバイオマーカーを論じる際には,3つの観点が存在する。非臨床試験における安全性の側面から見た腎毒性指標と,すでに腎機能低下を有する患者を対象にした治療介入の側面から見た有効性指標の観点,さらには近年注目されている医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンスにおける視点が必要とされる。本演題では,非臨床・腎毒性指標をレギュラトリーサイエンスの視点から臨床有効性評価に橋渡しする際の実例として,心・血管イベントのリスク因子とされる尿中微量アルブミンと,2011年に早期腎疾患バイオマーカーとして薬事承認・保険収載された尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)を取り上げる。腎疾患領域においては,ハードエンドポイントとしての末期腎不全に代る評価項目を用いた臨床試験のデザインが困難とされ,治療薬開発に資するサロゲートエンドポイントになりうるバイオマーカーが求められて久しい。2012年末,「糖尿病性腎症の治療薬に関する臨床的評価方法確立」に関する厚労省研究班報告の中で,早期腎症を対象とした安全性や用量反応性試験の主要評価項目としてGFRと同列に尿中アルブミンを加える提言がなされたことは画期的と思われる。その一方,過去の糖尿病性腎症治療薬の開発例で,第一選択薬にadd onした新薬投与群では十分な尿中アルブミンの寛解が得られず,用量設定が困難となったケースもある。講演では,尿中アルブミンとは独立したリスク因子として,尿中L-FABPの多様なエビデンスを合わせて紹介したい。
著者関連情報
© 2013 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top