日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-5
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シンポジウム 13 DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease):後発的に顕在化する発達期の影響
胎生期の低栄養環境と成長後の肥満発症リスク —マウス動物モデルによる検討—
*伊東 宏晃
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キーワード: 妊娠, 肥満, 胎児
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抄録
我が国において平均BMIは半世紀にわたり増加の一途をたどり,肥満の増加,メタボリックシンドロームの蔓延が社会問題となり久しい。これに対して,妊孕世代である20代,30代女性の平均BMIは一貫して低下しており,やせ願望による不自然なダイエットがその主たる原因であると危惧されている。一方,1970年頃より我が国における平均出生体重は減少の一途をたどっており,その背景因子の一つとして妊孕世代女性のやせならびに不自然な食生活が注目されている。そこで,浜松市において妊婦の食事摂取を調査したところ,妊娠期間を通じて1日の平均摂取カロリーは1,600キロカロリー未満であった。すなわち,妊娠前からの不十分な食事摂取を妊娠中も継続している可能性が危惧され,平均出生体重の減少との強い因果関係が示唆された。胎生期に低栄養環境に曝された場合には成長後に肥満を発症するハイリスク群となるという欧州の疫学研究が報告されている。さらに,具体的な機序として省エネルギー体質というべきthrifty phenotype仮説 が提唱されているが,必ずしも科学的解明がなされていない。そこで,母獣の摂餌制限により胎生期低栄養マウスモデルを調整して解析を試みた。胎生期に低栄養環境に曝されたマウスは,脂肪から分泌される強力な抗肥満ホルモンであるレプチンに対する視床下部における感受性が低下し,易肥満性ともいうべき形質を獲得することが明らかとなった(Yura S., et al.  Cell Metab 1;371-378, 2005 )。また,胎生期に低栄養環境に曝されたマウスが,逆に授乳期に良好な発育を認めた場合,肥満発症や耐糖能異常発症のリスクが増加することが明らかとなり,そのメカニズムの一つとして脂肪組織における慢性炎症反応の亢進が関与する可能性が示唆された(Kohmura K. Y. et al, Reprod Sci in press 2013)。
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© 2013 日本毒性学会
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