抄録
[はじめに]「牛角膜を用いた混濁度および透過性試験法(BCOP法)」が,2009年にOECDの化学物質に関する試験法ガイドライン(TG 437)に,眼腐食性および強度刺激性を評価する試験法として採択された。我々は昨年の第39回日本毒性学会学術年会において,BCOP法で得られたデータがDraize法の試験結果を基にしたGHS分類と一致度が高く,腐食性や強度刺激性の検出精度が高いことを報告した。今回,我々はBCOP法で,その刺激性がnon-severeと判断された化学物質に着目し,若干の知見が得られたので報告する。[方法]食用牛の眼球から摘出した角膜に被験物質を暴露した後に,オパシトメーターにより角膜の混濁度を測定し,フルオレセインナトリウム溶液の角膜透過率を分光光度計により測定した。また,混濁度および透過率より,in vitro刺激性スコア(IVIS)を算出した。その結果,IVISが55.1未満であり,non-severeと判定された物質を曝露した角膜についてヘマトキシリン・エオシン染色標本を作製し,病理組織学的検査に供した。[結果および考察] IVISからnon-severeと判定された化学物質に曝露した角膜においても組織学的な変化が認められ,BCOP法に病理組織学的検査を組み合わせることで弱刺激性物質の検出精度が高まることが期待される。