抄録
有害性評価支援システム統合プラットフォーム(HESS)は,化学物質の反復投与毒性を類似物質の試験データから推定すること(カテゴリーアプローチ)を支援するシステムとして開発され,平成24年6月に当機構ホームページから無料で公開を開始した。本発表ではHESSの運用状況と今後のシステムの拡充へ向けた取組について紹介する。HESSは平成25年1月末までに国内244件,海外57件のユーザ登録を受けている。また,その内訳は,化学系企業のユーザが最も多い。HESSの公開後,我が国のユーザを対象に,基本操作に関する無料の講習会を実施すると共に,利用方法の開拓のためユーザとの交流も積極的に行ってきた。ユーザーアンケートの結果によると,HESSは全般に化学品開発の研究開発時における利用例が多く,また試験機関においては毒性試験の用量設定への利用例が多かった。ユーザからの意見としては,収載データの拡充に関する要望が多かった。カテゴリーアプローチでは,評価対象の類似物質の試験データが多い程,信頼性の高い予測が可能となるが,現行のHESSのデータベースは化学物質審査規制法(化審法)や米国NTPの試験データに限られている。そこで,今後は,ユーザからの協力を得て収載データを拡充することを計画している。例えば,化学系企業の協力得て,肝毒性カテゴリーの拡充を進めており,また,製薬企業に協力を得てHESSへの医薬品の毒性データの取り込みを検討している。このように,ユーザの関心の高い物質群について優先的にシステムの拡充を行うことは,システムの実用性を効率良く向上させることにつながるものと考えている。また,システムの普及拡大のためには,多くの評価結果を例示することが必要と考えており,化審法一般化学物質のうち有害性試験情報がない物質について高曝露量の物質から順次HESSを用いた評価報告書の作成を進めている。