日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-131
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一般演題 ポスター
グリシドールのラット28日間反復投与による海馬ニューロン新生への影響
*赤根 弘敏齋藤 文代白木 彩子板橋 恵Wang Liyun赤堀 有美今田中 伸哉鈴木 和彦三森 国敏渋谷 淳
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抄録
【目的】グリシドールは,食用油の合成工程で副生成物として混入されるグリシドール脂肪酸エステル類の代謝によって生成される。先の我々の研究で,グリシドールのラット発達期暴露により,母動物での中枢及び末梢神経系での軸索変性及び児動物での海馬歯状回顆粒細胞層下帯(SGZ)におけるニューロン新生の分化後期の神経突起形成障害の反映を示唆する細胞標的性を示し,高用量ではニューロン新生影響が不可逆的であることが明らかになった。本研究では発達期暴露で見出された影響の28日間反復毒性試験での検出性の有無を検討し,さらに新たな神経毒性評価指標の探索を行った。【方法】5週齢の雄SDラットにグリシドール0,30及び200 mg/kgを28 日間反復強制経口投与した。免疫染色によりSGZにおける新生ニューロン分化指標,歯状回門における介在ニューロン指標の陽性細胞の検索を行った。またマイクアレイ解析により海馬歯状回及び帯状回での遺伝子発現量の解析を行った。【結果】200 mg/kg群で軸索傷害が認められ,SGZでのdpysl3(TUC-4)及びdoublecortin(DCX)陽性細胞数が減少し,歯状回門でのNeuN,calretinin及びreelin陽性細胞数が増加した。マイクロアレイ解析の結果,ニューロン分化やシナプス伝達に関わる遺伝子群のmRNA発現の変動がみられ,そのうちactivity-regulated cytoskeleton-associated protein(Arc)の免疫染色により,顆粒細胞層及び帯状回で陽性細胞数の減少を示した。【考察】グリシドールは28日間反復毒性試験においても,発達期暴露時と同等の分化後期の細胞を標的としたニューロン新生障害を誘発することが見出され,変動分子の28日間反復毒性試験の枠組みでの発達神経毒性評価指標としての可能性が示唆された。また,今回新たにシナプス形成,伝達の障害を示唆する指標としてArc分子が得られた。
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© 2013 日本毒性学会
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