抄録
【目的】ミニブタの皮膚構造および表皮の生理機能は,他の実験動物種よりもヒトに類似している.すなわち,体毛はヒトより太いが,密度は15-20本/cm2と比較的少なく,1毛群中の本数は1-2本でありヒトと同様である.また,表皮細胞層もヒトと類似しており皮膚表面には網目状の皮溝と三角形の皮丘が見られ,経皮吸収性においてもヒトと非常に類似していることが報告されている.このことからミニブタは経皮毒性を評価するために最も適した動物種であるが,投与方法および皮膚損傷状態の違いによって薬物吸収性に差があると考え,薬物の毒性を正しく評価する上で重要な投与方法等の基礎検討を実施した. 【方法】GÖttingen系ミニブタを用い経皮投与方法の比較として開放投与, 閉塞投与及びODT(閉鎖密封法)投与の3種類の投与法に加え,皮膚損傷モデルに投与を行い,経時的に薬物濃度を測定することにより投与方法及び皮膚状態の違いによる薬物吸収性の比較を行った.背骨から両側に体表面積の約3%ずつ(合計6%程度)の背部被毛を電気バリカンで毛刈し,微温湯で湿らせた脱脂綿で皮膚表面を軽く拭き取り皮脂および汚れを除去する.体表面積の6%となる面積のガーゼを複数枚用意し,投与液をガーゼに均一に浸み込ませる.このガーゼを用い各投与法を実施した.また,テープストリッピングにより皮膚損傷モデルを作成した後,損傷度合いを把握するためにTEWL(trans epidermal water loss)値を測定し指標とした.各投与の投与前,投与後0.5,1,4および24時間に前大静脈洞より血液を採取し,血漿中薬物濃度測定を実施することにより薬物吸収性の差を確認した.