日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-154
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一般演題 ポスター
メチル水銀によってマウス脳特異的に発現誘導される遺伝子群
*金 ミンソク斉藤 隆寛高橋 勉李 辰竜黄 基旭永沼 章
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抄録
【目的】我々は,メチル水銀による中枢神経毒性発現に関わる遺伝子群を明らかにするため,メチル水銀を投与したマウスの小脳における遺伝子群の発現変動をDNAマイクロアレイ法によって解析を行い,メチル水銀によって発現が2倍以上上昇する遺伝子を21種同定している。本研究では,メチル水銀によって脳特異的に発現誘導される遺伝子群を明らかにするため,これら21種の遺伝子について,メチル水銀投与によるマウスの各組織中での発現変動を検討した。【結果および考察】マウスにメチル水銀を7日間投与し,21種の遺伝子の小脳,大脳,肝臓,腎臓における発現変動を定量PCR法によって調べた。その結果,Ccl4(ケモカインの一種)およびScgb3a1(セクレトグロビンの一種)のmRNAレベルがメチル水銀によって脳組織特異的に上昇することが判明した。また,マウス神経前駆細胞(C17.2細胞)においても,メチル水銀によるCcl4およびScgb3a1の発現誘導が確認された。両遺伝子の発現誘導にはMAPキナーゼを介したリン酸化シグナル伝達経路が関与していることが報告されていることから,C17.2細胞を用いて,メチル水銀による両遺伝子の発現誘導機構におけるMAPキナーゼ(ERK, p38およびJNK)の関与を検討した。その結果,ERK阻害剤およびp38阻害剤によって,メチル水銀によるCcl4のmRNAレベルの上昇が抑制された。一方,メチル水銀によるScgb3a1の発現誘導は,いずれのMAPキナーゼ阻害剤によってもほとんど影響を受けなかった。メチル水銀は中枢神経系に対して選択的に障害を引き起こすが,その機構は全く不明である。両遺伝子のメチル水銀による脳特異的な発現誘導の機構を詳細に検討することによって,メチル水銀毒性発現機構解明のための有力な手掛りが得られるものと期待される。
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© 2013 日本毒性学会
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