日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-155
会議情報

一般演題 ポスター
メチル水銀による食物アレルギー誘発マウスへの影響
*中村 亮介曽根 有香清野 正子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】メチル水銀(MeHg)の毒性は水俣病をはじめとして詳細に研究されているが,アレルギー性疾患をはじめとする免疫系に対する低濃度MeHg曝露影響についての研究例はあまり多くない。本研究では,MeHgの長期間曝露による免疫機能への影響について検討することを目的とする。
 【方法】BALB/cマウスにMeHg(0, 0.02, 1.0 mg/kg)を週5回,4週間経口投与した。同時に卵白アルブミン(OVA)を投与し,食物アレルギーを誘発させた。最終曝露後に腎臓,肝臓,脾臓,脳及び小腸を摘出するとともに,血清を採取した。各臓器の重量,臓器中総Hg濃度を還元気化原子吸光光度法によりそれぞれ測定した。また,IgG1およびIL-13はELISA法によって測定した。
 【結果および考察】血清中OVA特異的IgG1について,OVA投与(OVA +, MeHg -)群はコントロール(OVA -, MeHg -)群に比べ,OVA及びMeHg投与(OVA +, MeHg +)群はMeHg投与(OVA -, MeHg +)群に比べそれぞれ上昇した。したがってOVA投与により食物アレルギーが誘発されたと考えられる。OVA +, MeHg -群の脾臓重量は,OVA -, MeHg -群に比べ有意に増加した。一方,OVA -, MeHg +群およびOVA +, MeHg +群の脾臓重量はOVA -, MeHg -群とほぼ同等であった。脾臓中総Hg濃度はMeHgの投与濃度に依存して増加したが,OVA -, MeHg +群と OVA +, MeHg +群の間に有意差は認められなかった。OVA +, MeHg -群における血清中IL-13はOVA -, MeHg -群と比べ有意に上昇した。その上昇はMeHgの濃度に依存して減少した。アレルギー誘発により惹起された脾臓の肥大および血清中IL-13の上昇がMeHg曝露によりコントロール値に戻る可能性が示唆された。以上より,食物アレルギー誘発マウスにおける過剰な免疫反応がMeHgにより抑制される可能性が示唆された。
著者関連情報
© 2013 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top