日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-164
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TNBS誘起大腸炎モデルのマウス系統差の解析
*水川 裕美子橋本 郁美釜谷 実希佐野 友里恵佐藤 有紀谷口 昌美天ヶ瀬 葉子漆谷 徹郎
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キーワード: 炎症性腸疾患, TNBS, 系統差
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抄録
炎症性腸疾患(IBD)にはクローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)があり,いずれも原因不明の難病であるが,近年患者が増大している.QOLの著しい低下や大腸癌リスク増大を引き起こすことから,原因解明やそれに基づく治療法の開発が望まれている.IBDの動物モデルとして頻用されるマウスtrinitrobenzene sulfonic acid (TNBS) 誘起性大腸炎モデルでは用いる系統によって症状の重篤度が異なり,BALB/cマウスではC57BL/6マウスに比べて重篤になることが知られている.そこでこの2系統間で発現に差のある遺伝子にIBD発症リスクに関わるものがあると考え,両者の直腸粘膜における遺伝子発現を比較した.2.5% TNBSを直腸内投与し,2時間後に直腸粘膜を採取してマイクロアレイで網羅的遺伝子発現解析を行ったところ,BALB/cの方が発現の高かった遺伝子には抗原提示やT細胞活性化に関連したもの,および白血球遊走に関連したものが多く,そのうちTNBSにより発現増大したものも多かった.C57BL/6の方が発現の高かった遺伝子には細胞骨格や小胞輸送に関連したものが比較的多かった.また,C57BL/6の方が発現が高く,かつTNBSによって発現が増大した遺伝子として唯一選抜されたcarbonyl reductase 3 (Cbr3) についてリアルタイムPCRでTNBS投与2,6,24時間後の発現を測定したところ,TNBSによる発現増大は2時間後が最大であり,24時間後には対照群との差は非常に小さくなっていた.Cbr3は炎症により誘導され,UC患者で発現が高いという報告がある.感受性の低いC57BL/6の方が発現が高く,TNBS投与後早期に一過性の発現増大が起こることから,Cbr3はIBD発症に関して防御的に働く,IBD発症リスクに関わる遺伝子のひとつである可能性があると考えられた.
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© 2013 日本毒性学会
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