日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-189
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一般演題 ポスター
PCBおよびPBDEの水酸化代謝物のヨードチロシン脱ヨウ素化酵素阻害作用における構造活性相関
*清水 良山口 雅史浦丸 直人黒木 広明北村 繁幸太田 茂杉原 数美
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抄録
【目的】Iodotyrosine deiodinase (IYD)は,甲状腺ホルモンの代謝によって生成したiodotyrosine類からの脱ヨウ素化反応を触媒し,甲状腺におけるヨウ素のホメオスタシスに深く関与する酵素である。一方,polychlorinated biphenyl (PCB)および臭素化難燃剤polybrominated diphenyl ether (PBDE)の水酸化代謝物は,甲状腺ホルモン受容体(TR)への結合活性を示すことが示唆されている。TR結合活性発現およびIYDの基質となるための化学構造的要因が類似しているため,PCBおよびPBDEの水酸化代謝物は,TRへの結合による甲状腺ホルモンかく乱作用だけではなく,IYDを阻害することで甲状腺ホルモンの代謝系のかく乱も引き起こす可能性がある。そこで今回,これら水酸化代謝物のIYD活性阻害作用を検討し,その構造活性相関を調べた。
【方法】IYD遺伝子をヒト肝臓cDNAライブラリーからクローニングし,プラスミドpcDNA3.1hygro-IYDv2を構築した。このプラスミドをヒト胎児腎細胞由来HEK293T細胞にトランスフェクションすることで,IYD過剰発現HEK293T細胞を樹立した。この細胞のミクロソーム画分と被検物質を3-iodo-L-tyrosineおよびNADPH存在下で反応後,HPLCで反応液中のTyr量を定量することで被検物質のIYD活性阻害作用を評価した。
【結果および考察】IYD活性阻害作用は,水酸化PCBでは4-OH-2’,3,4’,6’-TCBおよび4-OH-2’,3,4’,5,6’-PCB,水酸化PBDEでは4-OH-BDE42,4-OH-BDE90,4’-OH-BDE49および4’-OH-BDE17などで認められた。水酸基を有しないPBDEおよびメトキシ化PBDEは,いずれもIYD活性阻害作用を示さなかった。したがって,PCBおよびPBDEの水酸化代謝物のうち,4位に水酸基を有し,その隣接位にハロゲン基を有するものは,IYDの阻害を介して甲状腺ホルモンの代謝系のかく乱を引き起こす可能性が示唆された。
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© 2013 日本毒性学会
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