日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: W6-2
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ワークショップ 6 眼毒性リスク評価のサイエンス:お作法からの脱却
実験動物眼科学の基礎:生理・解剖・発生の種差
*佐々木 正治
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キーワード: 眼科学, 実験動物, 種差
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抄録
ヒトや多くの動物はその行動を視覚に大きく依存している。したがって,視覚機能に異常をきたすと,その生活を大きく制限される。眼は,角膜,水晶体,網膜のような様々に特化した組織の複合体であり,それぞれの組織が光を網膜に透過させ,光シグナルを脳に伝達させるために,恒常性を維持している。そのために,光路は透明性を維持しなければならず無血管であり,それゆえ血液とは別の方法で酸素や栄養素を供給する生理機能を持っている。光シグナルを受容する網膜は,脳と同様に外界から血液関門によって保護され,網膜の外層にある脈絡膜は集光による網膜の温度上昇を抑え,網膜機能維持のために密接に協調している。これらの光シグナルを脳に伝達させるための恒常性は,内因的及び外因的に環境変化が加わっても,その影響の程度が小さければ,恒常性は維持される。しかし,臨界域を超えると恒常性は破たんし,機能・組織障害が現れる。毒性試験において外因的環境変化は化学物質の曝露によって加わり,恒常性維持の閾値を超えた結果が組織・機能変化として現れ,変化の種類によっては毒性と判断される。眼検査のスタートラインは変化を捉えることであり,そのためには眼組織の基本的特徴を把握しておくことは必須である。毒性試験においては,様々な実験動物に眼検査を施し,化学物質の影響を評価する。恒常性を維持するための眼の特徴は多くは実験動物で共通しているが,生理学的あるいは形態学的な動物種差も存在する。したがって,使用した動物種に応じた眼組織の特徴を把握することは,実施した毒性試験における眼組織の変化を適切に捉えるだけではなく,眼毒性のメカニズムを解明するために実施されるメカニズム探索試験に利用する適切な動物種を選択する際にも重要である。本講演では,毒性試験で使用される動物種に焦点を当て,その眼組織の特徴をヒトと比較しながらレビューする。
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© 2013 日本毒性学会
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