日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: W6-4
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ワークショップ 6 眼毒性リスク評価のサイエンス:お作法からの脱却
眼検査所見の臨床的重要性とリスク評価
*友廣 雅之
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抄録
医薬品あるいは化学物質による視覚毒性として,メチルアルコール,クロロキン,キノホルム,サリンなどの事例が知られ,いずれもその時代において大きな社会問題となった。また,多くの医薬品において,様々な眼に関する臨床有害事象が頻繁に報告されている。このような理由から,非臨床試験における眼毒性リスク評価の重要性は極めて高い。
近年の非臨床毒性試験では眼検査技術が向上したことにより,充実した眼検査結果が記録されるようになったが,非臨床安全性評価として眼毒性を考慮した場合には課題が散見されている。眼毒性徴候が観察された場合,ヒトへの外挿性,特に視機能への影響を判断することが重要である。ヒトと動物の視覚器には多くの種差があり,また動物に多くの自然発症病変が生じることから,それらを正確に鑑別しなければならない。視機能に影響する毒性徴候のうち,たとえば再生能を持たない神経網膜に対する影響などは,治療による回復を期待することは難しい。その一方,何らかの治療手段がある毒性徴候の場合は,慎重に臨床試験を遂行することによって開発を継続することも可能となろう。ただし,治療手段があると言っても,治療手段そのものにリスクが存在する場合があり,開発される医薬品のリスク・ベネフィットを考慮する必要があるのは言うまでもない。また,眼毒性の発症機序に関する追加検討は,ヒトへの外挿性をより明確にできるような場合にリスク評価の助けになると考えられる。
最後に,近年急速に普及して眼科診療に革命的影響をもたらしている光干渉断層計(Optical Coherence Tomography: OCT)について紹介し,非臨床安全性評価における利用の可能性について述べる。光干渉断層計は生体において組織レベルの観察が可能な機器であり,経時的変化を追跡できるメリットは大きい。
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© 2013 日本毒性学会
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