日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: OS-2
会議情報

オープンシンポジウム Clinical Safety「基礎から学ぶベネフィット・リスク評価-医療現場へのフィードバックを考える」
医薬品のベネフィット・リスク評価―病院薬剤師の視点―
*政田 幹夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
リスク管理計画(RMP : Risk Management Plan)が本年4月以降に承認申請される医薬品について実施されている。対象となるリスクは承認審査時や製造販売後に安全性検討事項として示された「重要な特定されたリスク」,「重要な潜在的リスク」および「重要な不足情報」であり,それぞれに安全対策が取られる。医療現場に勤務する薬剤師は,RMPを実践し,医薬品を社会に適用する重要な役割を担っている。そのためには,医薬品の特徴を基礎から臨床まで一貫した情報として精査した上で,適正使用に努めなければならない。当院では,新規の医薬品を採用する際には,臨床薬理学・薬物動態学・製剤学・医薬品情報学・薬剤疫学・医療経済学等の多方面にわたる専門的観点から,臨床における医薬品の使用を想定したベネフィット・リスク評価を行い,必要に応じて適正使用のための対策を種々実施している。医薬品は製造承認を取得し,薬価収載されたからといって,ベネフィット・リスク評価が定まったわけではない。特に,安全性に関しては,治験の結果から得られる情報は限定的であり,市販後の急激な対象者の拡大により,発売開始後の早い段階から相次いで重大な有害事象が報告されることも少なくない。これを回避するためには,「重要な特定されたリスク」,「重要な潜在的リスク」に対する事前の評価と対策が不可欠であり,「重要な不足情報」は専門医による,予測・評価・判断の下での使用が有用であると考える。さらに,新規の作用メカニズムを持つ薬剤では,安全性に関する過去の蓄積情報に乏しく,市販後の注意深い観察を繰り返しながら,RMPを見直し,より良い医薬品へと育てていかなければならない。疾患を抱えた多くの人々が,医薬品に自分の健康を託していることを忘れず,医療に関わる全ての人が一丸となって,最も良いアウトカムが得られるよう取り組まなければならない。
著者関連情報
© 2013 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top