抄録
医薬品の重篤な副作用を化学構造から説明できるか否かを検証した.JAPIC 2012版に所載された1187種の低分子医薬品から,添付文書の重大な副作用に横紋筋融解症を含む92種の医薬品に特徴的なBAS(Basic Active Structure,基本活性構造)16種を抽出した.これらの構造を有する医薬は124種存在し,その内副作用記述のあるものが54種,ないものが38種であった.これらの活性構造にはスタチンやARBに特徴的なものや,ビフェニルや含フッ素化合物なども存在した.これら活性構造の有意性を国外の医薬品で検証するため,DrugBankとSIDER2をJAPICのデータベースと統合した.なお,DrugBankからはapproved, withdrawnの2種のカテゴリーにあるもののみを用いた.統合データベースには2002医薬品が含まれるが,その内の703医薬品がDrugBankとJAPIC双方に現れ,767医薬品がDrugBankのみに記載されている.BAS群を後者に適用して有意性を検証する際,毒性判断の指標が問題となる.共通する医薬品703種において,DrugBankのtoxicity検索は7種のみが毒性であるのに対し,SIDER2(postmarketing以上)では46種が毒性となり.JAPICの75種に近い.そこで767種の共通医薬品でも,SIDER2の毒性を指標として用いた.DrugBankのみに現れる767種の医薬品にBASを含むものは76種存在し,その内の6種がSIDER2の毒性有となり,これは毒性有の全10種で過半を占めた. 次にPMDAのJADER自発報告データベースにおいて,各BASを持つ医薬品群がどの程度現れるかを検証した.PMDAではROR指標値の95%信頼限界の下限値が1.0を超えるとシグナル有りとしている.16種のBAS中の大部分である13種において,シグナル有との結果を得られた.これらの結果は,本報告で抽出したBAS群が横紋筋融解症副作用のアラートとして有効であることを示している.