日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-17
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一般演題 口演
ヒト胎児および成人肝細胞のメタボローム解析による基礎代謝能の比較と化学物質による毒性発現の比較解析
*石田 誠一金 秀良久保 崇黒田 幸恵北条 麻紀宮島 敦子松下 琢関野 祐子
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抄録
[目的] 肝臓は生体内の様々な化学物質の代謝において中心的な役割を果たす器官である。胎児・新生児においても重要な器官であると考えられているが、成人とは機能に差異があることが知られている。本研究では、個体の成長期における化学物質の健康影響評価法を確立することを目的として、ヒト胎児肝細胞と成人肝細胞を対象にメタボローム解析を行い、胎児および成人肝細胞間の基礎代謝機能を比較検討した。さらに、ヒト胎児および成人肝細胞の化学物質に対する感受性の差異を明らかにするため、化学物質による暴露実験を行った。[方法] ヒト胎児および成人肝細胞の代謝物は、CE-TOFMSにより網羅的に解析した。化学物質による暴露実験にはトリブチルスズ、アセトアミノフェン、バルプロ酸、酢酸鉛、ペルフルオロオクタンスルホン酸の5種の化学物質を用い、各化学物質のIC50値は、WST-8アッセイより算出した。[結果と考察] ヒト胎児および成人肝細胞に対するメタボローム解析では、尿素回路の代謝産物が胎児肝細胞と比較して、成人肝細胞で増加していた。これは、胎児肝細胞が細胞内に生ずるアンモニアを尿素回路により代謝できないことを示す。また、グルクロン酸抱合およびグルタチオン経路など、第II相代謝に関与する代謝物も成人の肝細胞で増加していた。上記の5種の化学物質をそれぞれの細胞に暴露したところ、化学物質ごとに、胎児肝細胞と成人肝細胞で毒性発現の感受性が異なっていることが分かった。[結論] メタボローム解析の結果は、胎児および成人肝細胞間で基礎代謝能に差異があることを示し、化学物質に対する感受性の違いの基となると思われた。これらの結果は、メタボローム解析に基づく新規毒性試験系を確立するうえで重要な知見となる。
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© 2014 日本毒性学会
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