日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-27
会議情報

一般演題 口演
ラット膵がん血清診断マーカーの有用性の検討
*深町 勝巳二口 充津田 洋幸酒々井 眞澄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
我々が確立したCre/loxPシステムを用いた活性型KrasV12コンディショナルトランスジェニックラットを用いて、Creリコンビナーゼ発現アデノウイルスを膵管内に注入することにより病理学的にヒトに類似した膵管がんを発生させることが可能である。これまでにラット膵管がんにおいてErc/Mesothelinが高発現しており、Erc/MesothelinのN末側がプロテアーゼにより切断され遊離したN-ERCの血清濃度が高くなっていることから、N-ERCがラット膵がんの血清診断マーカーとなることを報告した。本研究においては、この血清診断マーカーN-ERCが治療効果の判定に有効か検討した。
発生したラット膵管がんの大きさと血清N-ERC濃度を測定すると、発生した膵腫瘍の重量と血清N-ERC濃度がよく相関した。また、発生した膵管がんより樹立した膵がん細胞株を移植したNOD-SCIDマウスにおいて、種々の大きさの腫瘍をもつ担癌マウスにおける血清中N-ERC濃度を測定したところ、移植腫瘍の大きさと血清N-ERC濃度がよく相関した。さらに、膵がん細胞を移植した担癌マウスに抗がん剤であるGemcitabineを投与するとコントロールに比べ腫瘍の大きさは小さかった。この際に腫瘍の大きさが小さくなったのに相関して血清N-ERC濃度も低下した。したがって、腫瘍の大きさと血清中N-ERC濃度がよく相関したことから、血清中N-ERC濃度が膵がんの大きさの指標として極めて有用であることが明らかとなった。また、血清N-ERC濃度により簡便に腫瘍の大きさを推定し、治療効果を判定することが可能であることから膵がんの化学療法剤の開発に有用なモデルと考える。
著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top