日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-39
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一般演題 口演
珪肺症例における自己寛容破綻の異常
*大槻 剛巳前田 恵松崎 秀紀李 順姫武井 直子西村 泰光
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抄録
珪酸とアスベストの慢性職業性曝露は塵肺症として知られる肺の繊維化を惹起する。珪酸曝露症例は珪肺症と呼ばれるが,合併症として強皮症,関節リウマチ(Caplan症候群として知られる),ANCA関連血管炎などの自己免疫疾患が知られている。従来,珪酸のアジュバントとしての作用と捉えられてきたが,我々は,珪酸曝露が直接免疫系に対して,なんらかの影響(毒性あるいは活性化)を惹起する可能性を考えて,実験系あるいは症例の末梢血単核球や,リンパ球などを用いて検討を加えてきた。アスベストについては,悪性中皮腫や肺癌などの悪性腫瘍の合併が知られており,この観点でもアスベストによる免疫系への毒性としての,腫瘍免疫の減衰について,いくつかの知見を得ているが,本演題では珪酸の免疫担当細胞への影響について,報告する。まずリンパ球の細胞死に関連が深いCD95/Fas分子について,可溶性Fasやその他のFas媒介アポトーシス阻害因子が珪肺症例で上昇していること。一方,機能性抗Fas自己抗体の検出や内因性生理的Fas誘導アポトーシスの阻害因子の珪肺症例末梢血単核球での発現減弱などの所見より,珪肺症例では慢性活性化を受け,長期生存にいたり,おそらくは自己抗原とも反応している一群と,細胞死に陥ってはリクルートされている一群がある可能性が想起された。前者は,反応性T細胞で,その他可溶性IL-2受容体の血清中での上昇や,Decoy Receptor 3 (DcR3)分子の血漿中濃度上昇,PD-1 mRNAの発現上昇などの活性化指標が検出された。一方,後者は制御性T細胞の可能性があり,珪肺症例制御性T細胞では活性化に伴うFas分子の過剰発現とともに,早期の細胞死が誘導されることが観察された。これらの免疫バランスの異常が,珪肺症例での自己寛容の破綻を惹起している可能性がある。
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© 2014 日本毒性学会
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