抄録
【目的】近年、ミニブタはイヌやサルに代わる実験動物として注目されている。ミニブタは家畜であることに加えて、冠状動脈の分布等の循環器系の構造がヒトと類似しているという特徴もある。我々はミニブタが、安全性薬理試験のテレメトリー試験に用いられているイヌやサルと同等に心血管系の評価することができることを確認している.そこで本発表では覚醒下でのミニブタにおけるQT間隔延長を評価するため、代表的なQT補正式を用いて、各補正式でのミニブタへの適性について比較した。さらに、QT延長を誘発する薬剤を投与し各補正式の有用性を検討した。
【方法】雄性ミニブタ(Göttingen Minipigs)にテレメトリー送信器を埋め込み、2週間以上の回復期間をおいて実験に使用した。血圧、心拍数及び心電図の測定は無麻酔、無拘束下で、薬剤の投与前2時間から投与後24時間まで測定した。QTcの補正式はBazett(B)、Fridericia(F)及びVan de Water(V)の方法を用い、QT/RR、QTcB/RR、QTcF/RR、QTcV/RR-プロットを作成しそれぞれのQTcについて比較した。
【結果・考察】ミニブタはイヌやサルに比べて心拍数の変動幅が小さく、QT間隔はイヌやサルのそれに比べてRR間隔の変動による影響が小さい傾向がみられた。特に低心拍数域においてはRR間隔に関わらずQT間隔はあまり変動しなかった。薬物に対する反応は、ソタロールの経口投与では、10および30 mg/kgにおいてQT間隔の延長及び心拍数の減少を確認できた。各補正式についてはBazett、Fridericia及びVan de Waterの順に補正能が高いことが示唆された。