抄録
【背景・目的】腎臓移植や腎臓温存手術において,急性腎不全は頻繁に発症し依然として高い致死率が報告されている.血流の遮断による虚血性急性腎不全モデルは,いまだ治療薬のない急性腎不全に対して,薬効評価及び病態解明を短期間で評価出来る優れたモデルである.我々は今までげっ歯類やイヌを用いたモデルで評価を行ってきた.しかし,げっ歯類やイヌの腎臓は構造的にヒトの腎臓と異なること,また評価できる項目に限界があることなどから,ヒトに近いモデルが望まれている.そこで,腎臓の構造が解剖学的または生理学的にヒトに非常に近いミニブタを用いて虚血性急性腎不全モデルを作製した.
【方法】雄性Göttingen系ミニブタを用いて,左腎臓に120分間の虚血を処置し,左腎臓の再灌流後右腎臓を摘出してモデルを作製した.虚血処置前,虚血処置後1,3,5,7,9日に血液及び尿を採取し,腎機能パラメータを測定した.
【結果】腎機能パラメータは,虚血処置前と比較して,尿素窒素,血中クレアチニン,尿量,尿中タンパク質の上昇及びクレアチニンクリアランスの低下を示し,モデルの確立を確認した.さらに,近年,幹細胞を用いた再生医療が注目されていることから,我々は,皮下脂肪組織由来の細胞群(Adipose-derived Regenerative Cells: ADRCs)に注目し,この腎不全ミニブタから採取したADRCsをミニブタの腎動脈内に移植し,ミニブタの虚血性急性腎不全モデルに対するADRCsの影響も検討中である.