日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-142
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一般演題 ポスター
難溶性化合物の静脈内投与を目的としたナノ化懸濁液の検討
*藤村 久子駒坂 太嘉雄香川 俊樹松尾 洋足立 民子北野 靖典竹川 晃司
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抄録
第39回年会で,難溶性化合物の経口投与毒性試験における曝露不足の解決策としてナノ化懸濁液による曝露改善を報告した.ナノ化懸濁液は静脈内投与により溶液と同様の体内動態を示すことが知られており,パクリタキセルなど静注剤としてもFDA承認のもと実用化されている.可溶化が難しい化合物の静脈内投与毒性試験に応用できると考えられたので,開発初期に静脈内投与試験に使用する目的でナノ化懸濁液の調製法を検討した.【材料と方法】難溶性モデル化合物としてシロスタゾール,プロブコール,スピロノラクトンを用いた.2 mLエッペンチューブ内で化合物10 mg,ジルコニアビーズ(0.3 mm径)0.5 g, 媒体 0.1 mLを混合し,ミキサーミル(Retsch社製)を用いて30Hz,30分間粉砕した(100 mg/mL).媒体で10 mg/mLに希釈し27G注射針を装着したディスポシリンジで吸引しジルコニアビーズを分離した.得られたナノ化懸濁液についてイヌ血漿中の溶解性をメノウ乳鉢法の懸濁液と比較した(添加直後,10分,30分).また,100 mg/mLについてオートクレーブ処理(121℃, 20分)による滅菌を検討した.【結果】文献報告のある媒体を比較検討したところ,0.5% HPC-0.5% Solutol HS 15および2% Poloxamer 338を用いた場合ナノ化が可能であった.粒径は,冷蔵保存下で15日間までナノレベルを維持した.シロスタゾールのナノ化懸濁液は血漿添加直後に飽和溶解度付近まで溶解し30分後も同等の濃度だった.これに対し,メノウ乳鉢法の懸濁液では添加直後ナノ化懸濁液の1/3程度の溶解で30分後も飽和溶解度付近には到達しなかった(ナノ化懸濁液の1/2程度).ナノ化後,オートクレーブ処理をおこなったところ粒度が大きくなったが,再度粉砕することでナノレベルに調製することが可能であった.オートクレーブ後のHPLC分析で化合物の分解は認められなかった.毒性試験で使用する高濃度の静脈内投与用ナノ化懸濁液が,汎用装置を用いて簡便に調製でき有用であると考えられた.実施中のイヌにおける媒体のヒスタミン遊離作用有無の確認とシロスタゾールのラット投与試験の結果も報告する.
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© 2014 日本毒性学会
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