日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-15
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優秀研究発表 ポスター
胎児期低用量ビスフェノールA曝露による大脳皮質における影響の神経発生毒性学的評価
*駒田 致和浅井 泰子守井 見奈松木 美知枝河内 宏太池田 やよい長尾 哲二
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抄録
樹脂原料としても用いられているビスフェノールA(BPA)は、経口で曝露されることでヒトに対しても、エストロゲン様の内分泌撹乱作用やDNAのメチル化異常作用を引き起こすことが報告されており、近年では胎児期の低用量曝露による影響が懸念されている。本研究課題では、胎児期のBPA曝露が大脳皮質の発生において引き起こす神経発生毒性学的影響を評価するために、胎児期・新生児期の大脳皮質の神経新生、層構造の形成、神経ネットワークの構築、その器質的異常が引き起こす行動学的影響に着目して研究を行った。C57BL/6JおよびICR妊娠マウスに対して連続的にBPA:20、200µg/kg/dayの強制経口投与を行い、組織学的な解析を行った。その結果、発生期の大脳皮質において神経幹細胞の神経新生のタイミングが早くなると同時に細胞周期が短くなることで、皮質板が肥厚し神経幹細胞数が減少することが示された。この形態的異常は新生児期も継続しており、組織学的・行動学的解析を行ったところ大脳皮質の第6b層が低形成になり、そこを足場に大脳皮質に投射するTyrosine hydroxylase陽性のドーパミン作動性神経細胞が減少していることが示された。さらに我々が報告している電子天秤を用いた新生児行動テストを用いて解析したところ、生後3日における自発行動、振戦の亢進が観察された。新生児期において、身体・神経機能の発育のため、また周囲の視覚、聴覚、触覚情報を収集し、それに応答するために体動をする。これらの自発運動や振戦は、高次脳機能の発達・成熟においても重要であり、大脳皮質で調節されていると考えられる。以上のことから、低用量BPAの胎児期曝露は大脳皮質の神経新生に影響し、層構造の形成や神経細胞の投射に異常を引き起こすことが、新生児期の行動異常の一因となっている可能性が示された。
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© 2014 日本毒性学会
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