日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-159
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一般演題 ポスター
環境中医薬品類の塩素消毒による毒性発現
*杉原 数美高田 鑑増田 莉奈大上 凌小林 秀丈清水 良北村 繁幸太田 茂
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抄録
【目的】近年、医薬品や生活関連化学物質 (PPCPs : pharmaceuticals and personal care products)による環境汚染が問題となっている。PPCPsを高濃度で含有する生活排水は、主に下水処理により浄水され河川や海域に放出されている。PPCPsには多様な性質を持つ化学物質があり、下水処理による除去率も異なり除去されず環境中に流出されるものもある。また、一般的公共下水処理場では、活性汚泥などによる処理の最終段階で塩素による消毒が行われており、塩素処理により構造変換を受け、変異原性などの毒性を発現することも懸念される。本研究では、環境中医薬品の塩素処理による構造変化と毒性変動に関して検討を行った。
【実験方法】イミプラミンをはじめとする医薬品を0.2 Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、次亜塩素酸ナトリウムを加え0.5~24時間反応させた。反応終了後0.2Mチオ硫酸ナトリウムを加え次亜塩素酸を中和後、Oasis HLBカートリッジで抽出し試料とした。経時的な分解率及び分解物の生成をHPLCで検出した。変異原性試験をS.typhimuriumTA100及びTA98を用いて行った。また、細胞毒性試験はHepG2細胞を用いてWST-1法を行った。
【結果および考察】医薬品を塩素処理後抽出しHPLCで検出したところ、ほぼすべての医薬品で分解生成物が確認された。中でも顕著な変化がみられたのがイミプラミンで、塩素濃度の上昇、曝露時間の延長により分解率が高くなる傾向が観察され、分解物と予想される新たなピークがいくつか検出された。Ames試験を行ったところ、TA98株、TA100株共にコロニーの増加傾向が観察され、変異原性物質の生成が示唆された。今後、生成した変異原性物質の同定および環境中からの検出を行う予定である。
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© 2014 日本毒性学会
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