日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-164
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一般演題 ポスター
日本人における尿中ネオニコチノイド系殺虫剤とその代謝物の濃度分布
*上山 純野村 洸司斎藤 勲近藤 高明岩田 豊人村田 勝敬涌澤 伸哉上島 通浩
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抄録

【目的】ネオニコチノイド系殺虫剤(NEO)は農薬や衛生害虫防除用薬剤として使用され、その使用量は近年増加傾向にあるが、ヒトの側における個人レベルの曝露評価は実施されていない。本研究では日本人一般生活者集団および農業従事者における尿中NEOおよびその代謝物類の濃度分布を明らかにすることを目的とした。測定対象物質はNEOであるacetamiprid (ACE), imidacloprid (IMI)、thiacloprid (THI)、nitenpyram (NIT)、clothianidin (CLO)、thiamethoxam (TMX)およびdinotefuran (DIN)、NEO代謝物である6-chloronicotinic acid (6CN)、3-furoic acid (3FA)および2-chloro-1,3-thiazole-5-carboxylic acid (2CTCA)とした。【対象と方法】測定対象者は小児(52名、愛知県)、一般健常成人(53名、愛知県)および農業従事者(58名、秋田県)の3群であり、年齢はそれぞれ3 ± 0、41 ± 11および59 ± 9歳(平均値±標準偏差値)であった。サンプル採取を各群で夏期(8-9月)と冬期(2-3月)に実施した。尿中NEOはLC-MS/MS、尿中NEO代謝物はGC-MSにて定量分析を実施した。検出下限値(LOD)は0.01 (ACE)、0.12 (IMI)、0.06 (THI)、0.04 (TMX)および0.1 µg/L (CLO, DIN, NIT, 6CN, 3FAおよび2CTCA)である。【結果と考察】総分析サンプル数274検体のうち、すべての検体で何らかのNEOおよびその代謝物が検出され、NEO曝露経路は不明であるものの、農業従事者のみならず小児を含む一般生活者集団において日常的にNEOに曝露している可能性が示唆された。検出率が高いNEOおよび代謝物(97%以上)はDIN、TMX、6CNおよび3FAであり、それぞれの幾何平均値は3.2、0.5、2.0および1.1 µg/g creatinineであった。夏期において一般健常成人群に比べて農業従事者群で有意に高値を示したのはIMI、THI、NIT、CLO、DIN、6CNおよび3FAであった。調査対象地域が異なること、農業従事者群の夏期(繁忙期)および冬期(閑散期)におけるこれらの尿中濃度に差がほとんど検出されなかったことから職業的NEO曝露の可能性を証明するにはさらに詳細な調査が必要である。

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© 2014 日本毒性学会
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