日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-45
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優秀研究発表 ポスター
Methotrexate誘発肺線維化におけるEMTを介した肺胞上皮細胞の関与
*大林 真幸久保田 聡カワセ 彩神山 紀子小林 靖奈山元 俊憲
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抄録
【目的】リウマチ治療薬であるMethotrexate(MTX)は重症化すると致死的な肺線維化を生じるが、その発症機序は不明な点が多く、安全で有効な薬物治療を提供するには毒性学的側面からの解明が必要である。これまで我々はMTX誘発肺線維化モデルマウスを作成し、肺胞上皮細胞(MAEC)が肺線維芽細胞に比べて細胞障害を受けやすく、線維化発症の起点となる可能性を示してきた。一方、線維化の発症と進行には肺上皮細胞が上皮間葉転換(EMT)により筋線維芽細胞に分化することが重要であることが示唆されている。そこで本研究は、MTX誘発肺線維化発症機序の解明を目的として、肺胞上皮細胞のEMTに焦点を当て検討した。
【方法】MTX誘発肺線維化モデルマウスおよび初代マウス肺胞上皮細胞とヒト由来肺上皮細胞A549を用いた。EMTの評価は細胞形態変化、上皮細胞マーカー(E-cadherin)ならびに筋線維芽細胞マーカー(α-SMA)の発現変化、遊走能を指標とし、Western blot法および免疫組織化学染色法、Wound healing法を用いて検討した。
【結果・考察】MTX誘発肺線維化モデルマウスの肺線維化巣において、E-cadherin陽性細胞とα-SMA陽性細胞が共局在していたことから、MTX誘発肺線維化の過程にはEMTを介した筋線維芽細胞の存在が示された。また、線維化巣には筋線維芽細胞の顕著な集積が認められた。さらに、MTX 1 μM 72時間処置したA549細胞は、EMTの特徴である線維芽細胞様の形態変化およびE-cadherinの減少、α-SMAの顕著な増加、遊走能の有意な亢進が認められ、筋線維芽細胞に分化していることが示唆された。この現象はMAECでも同様であった。以上のことから、MTX誘発肺線維化の過程にEMTを介した肺胞上皮細胞の筋線維芽細胞への分化が重要であると示唆された。
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© 2014 日本毒性学会
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