日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-46
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優秀研究発表 ポスター
気管内投与における分散媒の肺への影響
*長谷川 也須子久保田 久代吉田 緑宮川 宗之
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抄録
【背景・目的】実験動物において、呼吸器毒性を検索する投与手法の一つとして気管内投与が利用されている。気管内投与で被験物質を懸濁するために使用する分散媒の種類や投与用量は報告により様々であり、分散媒による肺への影響について比較、検討した報告は少ない。我々は気管内投与で一般的に使用されている生理食塩水、被験物質の性状により生理食塩水が使用できない場合に用いられる蒸留水について、分散媒の種類および投与用量の肺に与える影響について検索した。【材料と方法】8週齢の雄性Crl:CD(SD)ラットに生理食塩水、蒸留水をそれぞれ0.5、1.0、2.0 ml/kg体重で気管内投与し、投与後1、3、8日に剖検を行った。各投与群について気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いた生化学的検査および病理組織学的検査を実施した。【結果】蒸留水群の投与後1日でのみBALF中のアルカリフォスファターゼ(ALP)に用量依存性の上昇が観察された。また、生理食塩水群、蒸留水群の全ての投与用量において投与後1日で炎症細胞浸潤を主体とする肺病変が観察され、その肺病変は生理食塩水群の高用量、蒸留水群の全ての投与用量で投与後3日まで、蒸留水群の高用量では投与後8日まで持続した。【考察】本実験では、気管内投与に分散媒として使用される生理食塩水と蒸留水の肺への影響を検索した。その結果、肺への影響は両分散媒とも投与後1日で最も強く認められた。更に蒸留水群の高用量で、投与後8日まで肺病変が持続したことから、蒸留水は生理食塩水に比べ肺への影響が大きいと考えられた。従って、気管内投与の分散媒を選択する際には被験物質の性状とともに、その投与用量、観察期間に十分留意する必要があるものと考えられた。
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© 2014 日本毒性学会
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