日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-47
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優秀研究発表 ポスター
n-3系多価不飽和脂肪酸欠乏食を摂取したマウスに対するナノ粒子曝露の影響
*中村 仁幸堀 寛二木 力夫武田 健梅澤 雅和
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抄録
【背景・目的】疫学研究において、心血管障害及び呼吸器疾患を原因とする患者数と大気中の粒子状物質の濃度との間に正の相関があると報告されている。一方、必須脂肪酸の1つであり、抗炎症作用を有しているN-3系多価不飽和脂肪酸(N-3PUFAs)は、食の欧米化に伴い、摂取量が減少していると言われている。本研究では、脂質組成が偏った食事を摂取するマウスに対しては、ナノ粒子の経肺投与による影響がより顕著に表れるのではないかという仮説を立て、これを検証することを目的とした。大気中の超微小粒子のモデルとしてカーボンブラックナノ粒子(CB-NP)を用いた。
【方法】6週齢の雌性C57BL/6Jマウスを、通常食(CTR群)もしくはN-3PUFAs欠乏食(Def群)でそれぞれ4週間飼育した。CTR群に含まれる食事の脂質は大豆油20%、紅花油55%、ラード25%で調製し、Def群に含まれる食事の脂質は落花生油95%、ラード5%で調製した。CTR群、Def群のマウスをそれぞれVehicle群とカーボンブラックナノ粒子(CB-NP)曝露群に分け、経肺投与し、投与1日後と投与7日後にそれぞれの肺を採取した。CB-NPの投与液はPrintex90をミリQ水中に5 mg/mlで懸濁させ、30分間超音波処理を行った後、口径450 nmのフィルターに通すことにより、95 µg/mLに調製した。一方、Vehicle群はミリQを投与した。定量的RT-PCRを用いて、遺伝子発現量の解析を行った。各々の群間変動の有意性については、期間、食事、曝露の三要因による三元配置分散分析を行った。
【結果・考察】CB-NP曝露により肺でのIL-6、急性期炎症反応のマーカーであるOrm1,2やマクロファージに特異性のあるF4/80の発現量が有意に上昇した。これらのことからCB-NP曝露により肺での炎症反応への誘導が確認された。一方、N-3PUFAs欠乏食の影響によりOrm2やF4/80、自然免疫に関わるTlr4の発現量が有意に低下した。このことからN-3PUFAs欠乏により炎症への誘導が抑えられていると考えられる。
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© 2014 日本毒性学会
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