日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-50
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優秀研究発表 ポスター
経気道投与による体内動態制御が pirfenidone の副作用リスクを低減する
*鈴木 源加藤 尚視青木 麻子世戸 孝樹尾上 誠良
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抄録
【目的】先に我々は経口肺線維症治療薬 pirfenidone (PFD) の粉末吸入製剤 (PFD-RP) を開発し,本剤形は肺局所投与による薬物の皮膚移行抑制により,PFD の高い薬剤性光線過敏症リスクを軽減した.臨床では本副作用のみならず,PFDによる食欲不振や胃不快感などの胃腸障害や肝機能障害が報告されている.これらの副作用もPFD の動態制御により軽減が可能であるという作業仮説に基づき,PFD-RP の有用性について,光線過敏症以外の副作用リスクの観点から評価した.
【方法】PFD を気道及び経口投与後,ラットに evans blue 溶液を経口投与し,色素移動速度から消化管の輸送能を測定した.ラットに PFD 投与後 (30–300 mg/kg),血中バイオマーカーを測定して肝機能への影響を評価し,さらに UPLC/ESI-MS により各臓器への PFD 分布を精査した.
【結果・考察】PFD (100 mg/kg) 経口投与群は有意な小腸輸送能の抑制を示したが,PFD-RP (0.3 mg/rat) 気道内投与群では同現象を認めなかった.PFD の服用により高頻度で報告される食欲不振や胃不快感は消化管輸送能の抑制に一因があると考えられ,新規製剤技術による発症リスクの低減を示唆した.肝機能評価のため血中バイオマーカーを測定したところ,PFD (300 mg/kg) 経口投与群は alanine aminotransferase 活性の上昇傾向を示したが,PFD-RP 投与群では低値にとどまった.薬効発現量 (0.3 mg/rat) の PFD-RP を気道内投与した際,肝臓及び胃・小腸における組織内 PFD 濃度は,PFD 経口投与群と比して極めて低値を示した.すなわち,肺局所への PFD 投与による各関連臓器の PFD 曝露量の低下が副作用リスクを低減する可能性を示唆した.以上の知見より,PFD-RP の適用が現行の PFD 経口投与による特発性肺線維症治療と比較し,副作用リスクが低く,より安全な治療法の開発に寄与することを期待する.
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© 2014 日本毒性学会
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