抄録
【目的】核内受容体(NR)であるPregnane X receptor(PXR)は、薬物や異物に応答してCYP3A4等の代謝酵素を誘導することから化学物質の毒性発現にも大いに関与すると考えられるが、PXRリガンドの特異性は生物種により大きく異なる。そのためPXRを介した化学物質の生体影響は動物実験の結果が必ずしもヒトに適応できるとは限らず各生物種に対するリガンド特異性を予め評価しておく必要がある。一方で酵母two-hybirid法を応用したNRのリガンドスクリーニング法は、NRの転写の初期反応である転写共役因子コアクチベーター(CoA)のリガンド依存的な結合の検出によりリガンド活性評価が可能で、スループット性が高い利点を有する。しかし、NRは本来複数のCoAと複合体を形成して働くが、本評価系に用いるCoAは1分子しか選択できず、評価系の信頼性は用いるCoAに大きく依存する。本研究では、酵母two-hybirid法を用いたヒトPXR(hPXR)およびマウスPXR(mPXR)アゴニスト活性評価系の構築を目的に、各々評価系に用いるCoAの選別を中心に検討を行った。【方法】酵母株(Y190株)に、hPXRまたはmPXRリガンド結合領域とGal4 DNA結合領域の融合タンパク、および各CoA受容体結合ドメインを含む部分配列とGal4活性化領域の融合タンパクを発現させた。各々の酵母についてhPXRリガンド(rifampicin, Rif)およびmPXRリガンド(pregnenolone 16α-carbonitrile, PCN)に対する反応性をβ-ガラクトシダーゼ活性を指標に評価した。【結果・考察】hPXRに関してはPGC1αの部分配列を発現させた酵母がRifに対して最も良好な反応性が得られ、PCNに対しては反応性がみられなかった。またmPXRではTIF2の部分配列を発現させた酵母がPCNに対して最も良好な反応性が得られ、Rifに対しては反応性がみられなかった。以上よりhPXRはPGC1αの部分配列を、mPXRはTIF2の部分配列を用いることで酵母two-hybrid法によるリガンド活性評価系の構築が可能であることが示された。