日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-52
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優秀研究発表 ポスター
炎症反応を加味した薬剤性肝障害評価系の構築
*後藤 志麻出口 二郎野村 成章船橋 斉
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抄録
近年、薬剤性肝障害の原因として肝臓の非実質細胞群による自然免疫反応の寄与が指摘されており、炎症時に放出される各種サイトカイン等が薬剤性肝障害の発症に関与すると考えられている。自然免疫の誘導と薬剤性肝障害との関連については、LPS等の炎症惹起物質を用いた動物モデルは報告されているものの、in vitroで有用な評価系は未だ確立されていない。炎症惹起物質を用いたin vivoモデルにおいては、LPS等により誘導されるTNF-αが薬剤性肝障害増悪の重要な因子と考えられており、TNF-αが薬剤性肝障害に深く関与している可能性がある。そこで、本研究ではHepG2細胞を用いて、TNF-αを薬剤と併用した際の毒性発現について検証を行った。まず臨床で肝障害を誘発する薬剤として知られるトロバフロキサシンにTNF-αを併用したところ、TNF-αの併用の有無で毒性に差異は認められなかった。そこでNrf2等の酸化ストレス防御機構をヒストン脱アセチル化酵素が制御しているとの報告があるため、TNF-αとの併用群にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤として知られるトリコスタチンAをさらに加えたところ、薬物単独群及びTNF-α併用群に比べて細胞毒性が著明に増強した。一方、TNF-α及びトリコスタチンAとの併用による細胞毒性の増強効果は、臨床的に肝障害誘発が知られていないレボフロキサシンでは認められなかった。またジクロフェナクにおいては、薬剤単独に比べてTNF-αのみの併用でも細胞毒性の増強が認められ、TNF-α併用群にトリコスタチンAを加えることでジクロフェナクの毒性はより一層強く現れた。以上の結果より、TNF-αは肝障害誘発薬剤による細胞毒性を増強すること、またトリコスタチンAを加えることでTNF-αによる細胞毒性効果をさらに顕在化することが可能となることが示された。従って、本評価系は自然免疫の誘導が関連する薬剤性肝障害の評価系として有用である可能性が示唆された。
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© 2014 日本毒性学会
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