日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-77
会議情報

一般演題 ポスター
フタル酸ブチルベンジルの加水分解反応の種差:ヒト、サル、イヌ、ラット及びマウス肝ミクロゾームによる速度論的解析
高原 有香鬼無 悠高原 佑輔岡田 賢二村田 実希郎重山 昌人比知屋 寛之*埴岡 伸光
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】フタル酸ブチルベンジル(BBP)は、プラスチック可塑剤としてポリ塩化ビニルの柔軟性保持などの目的で広く使用されているが、in vivo及びin vitro試験系において哺乳動物に対して生殖・発生毒性や内分泌撹乱作用を示す可能性が示唆されている。BBPは、生体内でフタル酸モノブチル(MBP)及びフタル酸モノベンジル(MBzP)に加水分解され、これら代謝物は、親化合物のBBPよりも毒性が強いことも報告されている。本研究では、BBPの毒性発現機序を解明するための一環としてヒト、サル、イヌ、ラット及びマウスの肝ミクロゾームを用いたBBPのin vitro加水分解反応について検討した。
【方法】BBPの加水分解活性は、BBP(5–1000 µM)をヒト、サル、イヌ、ラットあるいはマウスの肝ミクロゾーム(20 µg protein)と37°Cで20分間反応し、生成したMBP及びMBzPをHPLCによりそれぞれ定量することにより測定した。
【結果・考察】いずれの動物種の肝ミクロゾームもBBPをMBP及びMBzPに加水分解した。MBP生成反応の速度論的挙動は、ヒト、イヌ及びマウス肝ミクロゾームではMichaelis-Menten式に、サル及びラット肝ミクロゾームでは正のアロステリック効果を示すHill式に従った。ヒトのKm及びVmax値は、それぞれ37.1 µM及び3.25 nmol/min/mg proteinであった。一方、MBzP生成反応は、ヒト、サル、イヌ、ラット及びマウスのいずれの肝ミクロゾームも正のアロステリック効果を示すHill式の速度論的挙動に従った。ヒトのS50及びVmax値は、それぞれ16.1 µM及び72.1 nmol/min/mg proteinであった。肝ミクロゾームによるBBPからモノフタル酸エステル体への加水分解反応のin vitroクリアランス値は、ヒト及びイヌではMBP < MBzPであり、サル、ラット及びマウスではMBP > MBzPであった。これらの結果より、ヒトにおけるBBPの加水分解反応の様相は、イヌと類似しているが、サル、ラット及びマウスとは大きな種差があることが示唆された。
著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top