日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-1
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シンポジウム 1 急性中毒の予後に影響するバイオマーカーの臨床および基礎毒性学的な考察
髄液バイオマーカーを用いた急性一酸化炭素中毒の予後予測に関する検討
*井出 俊光
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抄録
意識障害を伴うような比較的重症の急性一酸化炭素(CO)中毒では、約1~3割に遅発性脳症(間歇型一酸化炭素中毒)や遷延性意識障害などの神経学的後遺症が発生することが知られている。このリスク因子として高齢や長時間曝露が指摘されている。しかし、今まで受傷後早期に正確な予後予測因子がないため急性期回復後の予後判断に困難を伴っていた。
一方、2003年頃から練炭自殺がインターネットやマスコミ報道などにより拡散したことが社会問題となり、当院への搬送症例も増加した。遅発性脳症の臨床経験から病態を検討するなか、我々は2005年より髄液バイオマーカーに着目した。本学倫理委員会の承認を得て臨床研究を開始し、特に予後との関連性について髄液バイオマーカーの可能性を探ってきた。
本シンポジウムでは、当院でのCO中毒で髄液を採取した68例、計314回の髄液の分析より得られた知見をもとにCO中毒における髄液バイオマーカー測定の意義について報告する。なお、腰椎穿刺による重大な合併症はなく、髄液採取は安全に施行し得た。
おもな内容として、①遅発性脳症の臨床、②脳症例での継時的髄液MBPの推移、③脳症未発症例での潜在性脱髄例の存在。④受傷後早期の髄液インターロイキン6の上昇と脳症、⑤各種サイトカインとケモカイン分析、⑥髄液S100Bと遷延性脳症、⑦脳症の発症予測式などについて報告する。
意識障害を伴う急性一酸化炭素中毒では予後評価のため髄液検査が有用であり、特に脳症の予測には最終曝露から24時間以内の髄液IL-6濃度が、脳症発症後には継時的な髄液MBPの推移を評価することが重要であることを紹介する。当日は実際の経験症例を臨床の側より述べたい。
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© 2014 日本毒性学会
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